GOCHAMAZE timez(ごちゃまぜタイムズ)
いわきから「ごちゃまぜ」 あらゆる障害のない社会へ

 

“ちがう視界から、ちがう世界を描きだす” をテーマに、知的障害のある人と社会の橋渡しをする。そんなテーマを掲げたプロダクトブランド「MUKU PROJECT」。ブランドの代表を務める松田崇弥さんに伺ったのは、ブランドとして、障害者の存在をいかに伝えていくのか、ということ。障害を思わせないブランドにすべきか、障害者だからこそのブランドにすべきか。そのジレンマの狭間に、障害をいかに伝え、いかに受け止めるのかのヒントが見えてきました。

interview
松田 崇弥さん
企画を通じて「違う世界」を伝える


 

アート作品のようなスタイリッシュなネクタイ。美しいデザインの雨傘。ずっと使っていたくなるような手触りのブックカバー。MUKU PROJECT(以下、MUKU)のプロダクトは、どれも「障害者が作ったとは思えない」ハイクオリティなものばかり。製造には日本を代表するメーカーが関わっており、価格帯もそれにふさわしいものになっています。

MUKUは、“ちがう視界から、ちがう世界を描きだす”をテーマに立ち上げられたブランド。知的障害のある人たちのアート作品を再編集し、ファッションアイテムや雑貨などのプロダクトとして広めていくことで、新しい価値を提案しよう。そんな想いから、松田崇弥さんが立ち上げました。先日、その松田さんがいわきに来るというので、ソーシャルスクエアいわき店にお越し頂き、お話を伺ったのでした。

松田:ブランドを立ち上げたのは、知的障害のある人たちの魅力や可能性を広げたいと思っていたからです。もともと双子の兄に先天性の自閉症があって、いつか知的の障害の人と関わる仕事がしたいとは思っていました。そんな時、知的障害者の描く作品を扱う美術館で彼らのアート作品に触れたときに、すごくいいな思って。それを、上質なプロダクトとして世の中に出すことはできないかなと考えたんです。

アート作品に出会った時、このアート作品を安い値段で販売してしまったら、すごくいやだなって思って。最初に双子で何かやろうって思ったときに、値段は高く釣り上がってもいいから、最高品質のメーカーと組んでいいものをつくろうということを考えていました。兄は通っている施設でコーヒーをパック詰めしていた時期があったんですけど、そのパックが道の駅で500円とか安い値段で売られていて。福祉施設の商品が安く売られている現状が、とても嫌だったんです。

だから、元々のアート作品の価値を下げるようなことだけはしたくなくて、組ませて頂くメーカーも、国内で実績を残しているところや、より上質な商品を届けている会社とやるべきだと思ったし、デザインだけでなく、製法とか素材とか、そういう部分でもこだわろうと。そんな気持ちは、ブランドの立ち上げから持っていました。

 

作品と、それを描いた方の存在が、立体的に立ち上がってくるようなデザインのタイ(MUKU PROJECT ウェブサイトより)

 

ブックカバーには松田さんのお兄さんの作品が使われている(MUKU PROJECT ウェブサイトより)

 

障害者の作るプロダクトは、全国各地で作られています。ただ、MUKUのように、すべてをハイクオリティに、というものはあまりありません。MUKUは、冒頭に書いたように、「障害者が作ったとは思えない」のです。それでも敢えて「障害」というものを表に出す理由は、どこにあるのでしょうか。

松田:障害を出す、出さないという問題は、いまでもめっちゃありますよ。ぼくも最初は障害とか出さないで、純粋にカッコ良いものを出そうと思っていました。でも、徐々に勉強していくうちに、描かれているアート作品って知的障害を持っている人だからこそ描けるものなんだと思うようになったんです。

いわゆるアール・ブリュット、アウトサイダーアート、エイブルアートなど、障害者アートがカテゴライズとして含まれるものには、二つの軸があると思っていて。ひとつは、障害の有無に関係なく才能がある人はあるのだから、いいものはいいんだという考え方。もうひとつが、知的障害のある人たちが描くから素敵なんだという考え方。ぼくはどちらかというと後者の方かなと思っています。

というのも、知的障害のある人の描く絵は、繰り返しの表現方法がとても多いんです。猫をひたすら描き続けるとか、花を描き続けるとか、繰り返しの表現が多いんですよ。うちの兄も自閉症で、日曜18時にちびまる子ちゃん見ないと発狂するんですが、兄は規則正しいルーティーンで生活するので、そのルーティーンや規則性がアートにも現れているんだなと思いました。

それで思うのは、そういう障害だからそういう表現ができる、というだけでなく、彼らはそれが気持ちいいからやってるんだろうなって自分の中では解釈していて。それで、「知的障害のある人たちがやっているアートです」とハッキリ言ったほうがいいのかなと思っています。ネガティブな方向ではなく、よりポジティブな方向で考えたいというか。

 

ソーシャルスクエアいわき店にて、お話を伺いました

 

−障害があるからこそ作れる作品

この文章の冒頭で、MUKUの商品を「障害者が作ったとは思えない」と敢えて紹介しましたが、松田さんの話を伺っていると、そうではなく「障害があるからこそ作れる」作品なのだということがわかります。障害者が作ったとは思えない作品と、障害があるからこそ作れる作品とで、障害という言葉の持つ意味やイメージはまるで異なります。異なるどころか、正反対と言っていいかもしれません。そこにこそ、このプロジェクトの価値があるように感じます。

障害があるのに頑張っている。障害があるのにいいものを作っている。すでにそこに偏見の種があります。そして多くの授産施設、就労支援事業所で作られるプロダクトは、そのように受け止められているのが現実ではないでしょうか。確かに支援は必要ですが、そこには、買う側の「何かが劣った人たちを助ける」という意識が、どうしても見え隠れしてしまうのです。

松田:うまく言語化できないですけど、「社会を良くしたい!」とか、いいね!がいっぱいつくかな、なんて思って言ったりはすることはあるかもしれませんが(笑)、実際には、そんなに社会変革したいってのはなくて、感覚としては部屋が汚いから片付けるみたいな感覚に近いかもしれません。でも、他人の部屋まで片付けようとは考えてない。結果として社会にまで飛び火していったらいいな、くらいで。

兄に障害があるので、母もすごく関心が高い人で、土日になると、岩手の自閉症協会に連れてかれたりとか、知的障害の兄弟がいる人が集まる会みたいなのにも連れてかれたりして。小学校時代は土日をそれに捧げる日々だったので、卒業文集とかも将来の夢は養護学校の先生になりたいとか書くような、そういう人間だったんです。ある意味、障害福祉のサラブレッドというか。

でも、東北芸術工科大学で企画を学んで考え方が変わりました。オープンキャンパスで芸工大に行ったときに小山薫堂さんがいて「企画が最強なんだ」というような話をしていて。企画が最強になれば、デザイナーもメーカーも、いろいろな人がついてきてくれる。だから企画が最強なんだと言うんですね。そして実際に小山薫堂さんのもとで企画を学んできました。

だからMUKUも、社会変革ではなく、ひとつの企画として考えてて、それが受け入れられることで、結果的に、障害者の存在や、アート作品の意味が社会に伝わっていくというような感じなんです。障害福祉の専門家だけじゃなくて、違うフィールドにいる人たちも巻き込みながら、これまでとは違う見え方、見せ方ができるんじゃないかなと。そういうことは、企画を学んできたからこそ思いついたことかもしれません。

松田さんの取り組みは、世間一般的な「障害福祉」的なプロジェクトであるように見えますが、障害をどう捉えるのかという意味で、全く違うことをしているようにも見えます。障害というものを滑らかに捉え、直接的な変革・運動ではなく、むしろ間接的に、興味関心や日常の延長線上に新しいあり方を「企画」として挿入し、それを受け取った人々にポジティブな価値を与えていくような。その先に、松田さんはどのような未来を見ているのでしょうか。

 

社会運動ではなく「企画」を通じて障害を問う松田さん

 

松田:実は、来年か再来年かに「就労支援B型」をやりたいなと思っていて、ソーシャルホテルみたいな宿泊事業をやりたいなって思ってるんですよ。ホテルって繰り返しのルーティーンワークが多くて、10時にチェックアウトです、布団たたみます、皿洗いこの時間ですと、時間が区切られたものがやりやすいなと。

以前「注文を間違える料理店」ってあったじゃないですか。間違ってしまう認知症の人がいて。あれがすごいヒントになっています。あれって、店員は認知症ですよと前もって断ってから入店してもらうんですが、それを事前に提示することによって、間違えることそのものがエンターテイメント化してるじゃないですか。

ぼくらも、挨拶できないホテルマンがいますとか、皿を落としてしまう皿洗いがいますとか、彼ら自体もコンテンツ化しながら、間違ってしまう、うまくできないっていうことを面白がって寛容に受け止められるような宿泊施設に挑戦したいなと思っています。

ネガティブなものが、なぜかポジティブなもの、ユーモラスなものとして感じられてしまう。そういう価値の転換というか、そのくらい振り切れたことをしてみたいんです。これを言ったら怒られそうですが、デートスポットになるくらい振り切った施設にしたいんですよね。ぼく自身、福祉のプロじゃないんで、現場を知ったら課題に直面するとは思うんですが、まじめさが求められるような分野だからこそ、面白い仕組みにする。それってチャレンジだと思うし、やってて面白いと思える企画をこれからも作っていければと思います。

 

プロフィール 松田崇弥(まつだ・たかや)
1991年5月8日生まれ。岩手県出身。双子の弟。東北芸術工科大学 企画構想学科卒。小山薫堂率いる企画会社、オレンジ・アンド・パートナーズのプランナーを経て独立。ボーダーのカノウセイを追求する企画・編集チーム、株式会社ヘラルボニー、代表取締役社長。福祉施設に所属するアーティストの作品をプロダクト化するプロジェクト、MUKUの代表を務める。

GochamazeTimesCompany

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全国各地にライターやプロボノを抱える編集社。タブロイド紙|GOCHAMAZE timesの季刊発行、および、地域の方々と共創するごちゃまぜイベントの定期開催により、地域社会の障害への理解・啓発|年齢・性別・国籍・障害有無に限らず多様な”ごちゃまぜの世界観”をデザインし続けている。

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