GOCHAMAZE timez(ごちゃまぜタイムズ)
いわきから「ごちゃまぜ」 あらゆる障害のない社会へ

受け止めあった結果、生まれた「場所」

増井佐緒里さん 黒須悟士さん

今回お話を伺ったのは子育てと仕事をしながら「えんがわの家 よってこ しもだ」の運営を行っている、創設メンバーの増井佐緒里さんと黒須悟士さんのお二人です。学生で賑わう駅周辺から徒歩30分のところに、「えんがわの家 よってこ しもだ」はあります。

老若男女が気軽に過ごせてホッとできる居場所を目指して、地域の方々が運営しているコミュニティスペースです。

野菜を販売したり、教室を開きたい人が講座を開いたり、お誕生日会をやりたい人はパーティーを開いたり、ぼーっとしたい人はぼーっとして…。

みんなが思い思いに過ごしています。

駅周辺から離れた閑静な住宅街の一軒家。看板が立てかけてある門を抜けると庭があり、草木が見えます。

家の中からも庭の様子を楽しめ、早春には梅の花も楽しめます。

耳を澄ますと、遠くから人が暮らす音。

雰囲気に身を任せて、そっと目を閉じたくなる空間が広がっています。

地域のみなさんで作成されたベンチ

訪れる度に驚くのは、毎回スタッフさんがひとりひとりに挨拶をし、話しかけてくださること。

少し立ち寄った人に対しても、お声がけされている丁寧さが心地良いです。

販売されている野菜はすぐ売り切れてしまうそう

開所している水・木・金の週3日の多くは、地域の方が先生となってイベントやレッスンが開催されています。

増井:大家さんの「この空き家を何か福祉的な事に使えないか」という想いが、色々と巡り巡って、私の所にお声がかかり、「みんなで集まれて、安心して子どもを育てられるところがほしい!」と、同じ地域に住む知人とこの場所を作りました。子育て支援拠点にも行ったりするのだけど、いろんな世代の人たちが来れる所、小学生・中学生・高校生になっても来れる場所はないから、そういう場所の方がいいかなって。おじいちゃんもおばあちゃんもみんなで集まって、安心して過ごせる場所ってなかなかないなあと思ってたので。

黒須:僕は地域のことやこういうことに全く興味がなかったんだけど、増井さんたちに「手伝って」と呼ばれて、関わることになりました。

2013年に開所した「よってこ」には、「ぼーっとしていてもいいんだ」と思わせる居心地の良さがあります。             

開放感のあるお庭。スタッフのみなさんがあたたかく接してくださる。だから家に帰る感覚で行ける…。

そんな空間を作り出す秘訣とは何なのでしょうか。

増井:気楽な感じ、自由な感じが「よってこ」らしさかなあ。気楽・自由っていうのは「どこの行政にも入っていないし、自分たちでやっているから、気が楽。「この日はスタッフがいないから休みにしちゃおう」とかもできる。やっている人たち以外からの制約がない。だから続いているっていうのはあると思う。それが気楽だし、続けられてこれたんだと思う。何しちゃいけないとか、何日開けなきゃいけないとか、そういうのもないし。自治会の方たちもそれで許してくれているというか、見守ってくれているので、見守りがあってこそできているとも言える。これだけ開放感があるお庭があるから落ち着くわ、と言って来てくれる人もいます。収入があるに越したことはないけど、私たちもボランティアって割り切ってるから、今は無理してまで集客をしようとはしていないし、来たい人が来てくれればいいかなと思って。ノルマがないからギスギスしない。誰も来ない日は「今日は誰も来なかったね!」で終わる。

黒須:どこからもお金が出ていないし、自分たちが好きでやっているだけなので、それはすごい特徴だなと思う。誰もこなかったらこなかったでいいんじゃないの?って。来たくなかったんだからさ、って言える。人があたたかいと思っていただけているとするのであれば、それは、まず、「目標がない」っていうのがあると思う。みんなゆるくやっているから。ぎすぎすしていない。目標を立てると反動で疲れる、みたいな。逆に言うと、「よってこ」の場合は、それで生計を立てている人がいないので、そんな甘っちょろいことが言える。そこの壁はまだクリアできていないんだよね。それで食えてて初めてもっと偉そうに言えるよね。みんな生計をよそで立てているからね。よそではよそでさ、そこに従ってさ、全然また違った人格が現れるかもしれなくて。それでも「よってこ」って成っている。

そうお話ししてくださったお2方ですが、始めた当初は少し違ったそうです。

増井:2年くらいは「いろいろやらなきゃ」「知られなきゃ」「お客さんも集めなきゃ」と、社会福祉協議会・区・自治会に対してがんばっていたんだけど。途中で、そんなにやっても変わらないかなって感じたんです。定着してきてくれたっていうのもあるかもしれないけど。どんなにPRしても、興味を持って来てくれる人は来るし、来ない人は来ないし。

地域のみんなで知り合う場にしましょう、楽しい場にしましょう、ではなく、人が集まったらそうなった。作りすぎてないから、みんなが気楽。

「好きだからやっている」「ゆるくていいじゃん」という考え方から、それは生まれていました。

増井:実際は中高生って忙しいけど、小学生の時に来ていた子が「みんなで集まりたいんだけど、ここ使わせてもらえるかなあ?」とか「ちょっと宿題やりたいんだけど」と来てくれる子がたまにいます。10人に1人でも嬉しいです。それと、街にある掲示板や回覧板に挟んである「よってこのチラシ」を長期間目にしていて来るようになった方が結構いらっしゃいます。5年間も毎月回覧板に入れているからか、「ああ、「よってこ」ね」と、大分名前は知られてきているみたいだなって感じます。

黒須:見たこともやったこともないし、もっと言うと興味すらないことをやってみた感じ。会社勤めを辞めてみたときの感想とすごく近い。サラリーマンを辞めて、子どもが生まれて、日中街の中を歩く機会に恵まれるとさ、全然男がいないのにびっくりしてさ、「あ…、昼間の地域ってこうなんだ。」って。声にならない声とか社会にはいないことにされている存在が沢山あるんだな、と気付きました。「子どもたちはこういうことやってみたいんだ!」「おじいちゃんおばあちゃんってこんなことに困るんだ!」とか。主婦の人たちのひとつひとつの愚痴、地域活動に関心を示さない大人たちの存在、とか。

会社で勤める男性なんか、特にこう、奥さんが…主婦の人たちが…とか、なんか偉そうなこと言ってっけどさ、「お前の留守支えてるの奥さんだったり見知らぬ地域の人なんだぜ?」って。そういう、人生をトータルとして見れた、というのはとても良かった。それはみなさんに味わってほしいなと思います。その方が、地域や地域の活動に関心がなくても、自分の関心を持っていることを豊かにしてくれるから。

ー今後の「よってこ」の使い方、「ごちゃまぜ」の持ち味

そんな「よってこ」の今後はどうなっていくのでしょうか。

増井:縛られない、ゆとりがある…。ゆるく長くやっていけたらいいなって思う。

のんびりふらっと来たい人たちにも来やすい感じにできたらいいかな。若い人たちが来るところなのよね?と聞かれたりすることもあるので、もうちょっと気楽に足を運んでくれたらいいなーと思います。

今、いろんなイベントがあるけど、ほとんどが、こんな資格を持っているのでとか、こんな事やってみたいんですけど、と、自分から来てくれていて。あれやりたい、これやらしてください、と言う人たちも、多分、今持っている技術を何かに生かせればと思ってやってくれている人たちで、これじゃ売り上げが上がらないからと思ったらもちろん止めてくれていいわけだし、そのステップで使ってもらって、ここはいいから。いつでも、誰でも、ふらっと行ける、使える場所がここにある、って思ってもらえたら嬉しいです。

黒須:すぐ無くなったりしてね(笑)。もしかしたら物理的な場所なんかなくてもいいのかもしれない。もしかしたらね。無くなっても続くかもしれないし。

男女かかわらず仕事を持っている人、特に責任が重ければ重いほど、こういうことに関わって、もう1個の場を持つことで、何かを発見できたり、相乗効果でもう1個の場が更に豊かになる。だから、仕事をしている男性こそこういった場に関わるべきじゃないかなって思うね。それはもう男性ではなくて、1人の人間として地域に入っていく。新しい自分を発見するから良いことなんじゃないかな。でもね、それを言っても、「そりゃわかるんだけど」っていう話になるんだよ。それもわかる。気付いた時に、「あ、俺もやってみようかな」って思ってくれる場所として、細く、薄く、長く、「よってこ」が維持できるといいのかなーっていう気がする。

「よってこ」って、ちょうど、色のついてなさ加減がいいと思う。なんとでも言えるの。福祉の人に対しては「福祉です」、空き家活用の人には「空き家活用です」、高齢者に関する人には「高齢者に関する場です」、子どもに関する人には「子どもに関する場です」。それがごちゃまぜのいいところだよね。ごちゃまぜにする意味ってそこかなと思う。

課題を持っている人も、課題を持っているだけでなく、他の人の役に立てるソリューションを持っているはず。それらが細かい点同士でマッチできたら面白いよね。今の社会システムは、課題がある程度のボリューム、深刻さにならないと、行政も企業も目を向けない。なかったことにされてしまう。そうじゃない社会セクターができたら面白い。「よってこ」を使って、地域のお試しごとをしていこうかなと。

そういうとき、一つの肩書きで相手と向かいあったら、その点でしか関われない。相手もそう見るから。もっとオープンに、向こうに扉を開いてもらうためには、「よってこです」みたいな(笑)。こういう使い方だよね(笑)。誰にでも引っかかる謎の魔球みたいな。そんな使い方もできるし、何とでも使えるんだよな。人によっていろんなことがあるんだろうけど、「よってこ」でちょっと活動すれば面白いのに〜、こんなに自由にできる場所ないじゃん、って思うよ。

<編集後記>

3世代で生活している世帯だけでなく、学生(留学生)も多く住んでいる横浜市下田町。

老若男女だけでなく、外国の方も沢山いらっしゃいます。

国籍や世代を超え、地域に住んでいる方がやりたいことをやるために、それぞれの都合に合わせて、気張らずに集っているところが「ごちゃまぜ」でした。

ごちゃまぜの形は多様だと思います。

「よってこしもだ えんがわの家」の場合、「お互いのことを受け止めるけれど、干渉しすぎない。それによってコミュニティの人数や関わり方も変わってくるけど、それはコミュニティの形やあり方を変えることで維持していく。」という方針のように感じました。

***

募集:「えんがわの家 よってこ しもだ」より

よってこでは、ボランティア・スタッフとして一緒に活動して下さる方を募集しています。具体的には次のような仕事があります。在宅で出来ることもあります。皆さんがお持ちのスキルを社会で活用する良い機会になると思いますので、お気軽にお声掛け下さい。
・ホームページやチラシのデザイン、更新作業
・イベントの企画、実施
・会員の管理、メール配信などの事務作業
・シフトに入って頂く

また、習い事やイベント、小さく始めてみたい取り組みなどありましたら、よってこで実現しませんか。様々な企画のお持ち込みも大歓迎です。

東急東横線・目黒線日吉駅より「サンヴァリエ日吉」行きバス

新田坂下バス停徒歩1分

<連絡先>

TEL: 090-8306-8566(開館時間のみ)

Mail: engawanoie.shimoda@gmail.com

facebook: http://facebook.com/engawanoie

twitter: @engawanoie

HP: http://engawanoie.com

GochamazeTimesCompany

全国各地にライターやプロボノを抱える編集社。タブロイド紙|GOCHAMAZE timesの季刊発行、および、地域の方々と共創するごちゃまぜイベントの定期開催により、地域社会の障害への理解・啓発|年齢・性別・国籍・障害有無に限らず多様な”ごちゃまぜの世界観”をデザインし続けている。

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