GOCHAMAZE timez(ごちゃまぜタイムズ)
いわきから「ごちゃまぜ」 あらゆる障害のない社会へ

自由は失ったけれど、世界は広がった

高橋 尚子さん

YouTubeでテンポ良く語る彼女は凛としていて美しく、聡明な女性の印象。しかし実際に会ってみると、無邪気に笑う元気で明るい女性。高橋尚子(たかはししょうこ)さんは車いす生活を送りながら、フリーのWEBデザイナーとして働く傍ら、YouTubeでは約4万人の視聴者に向け“車いす女子の暮らし”を発信しています。そんな彼女のこれまでと、これから望む社会の在り方を聞いてみました。

『しょうこちゃんねる』というYouTubeチャンネルで、自身の体験を淡々と語る女性。派手な演出があるわけでもなく、有名人が出演することもないが、どうしてこうも夢中になって見てしまうのでしょう。不慮の事故により、頸髄を損傷し車いす生活になったにも関わらず、生き生きと暮らす彼女の「生」を垣間見ることのできるYouTubeチャンネルの登録者は約4万人。WEBデザイナーとして働き、車も一人で乗りこなす。そんなしょうこさんのお話を伺いに、会いに行ってきました。

しょうこ:車いすになったきっかけは高校3年生の1月の事です。当時卓球部に所属していた私は、全日本選手権で東京に行っており、空港から寮までの帰り道で事故に遭いました。その瞬間、眠っていたか携帯を見ていたかで、ぶつかる瞬間の事を覚えてないんですよ。目が覚めた時には病院のベッドの上で、すでに手術が終わっていました。その時は“生きててよかったなぁ”と思いました。しかし、首の骨が折れ頸髄を損傷し、鎖骨から下がまひしてしまい、車いすの生活となりました。身体の機能には個人差があるので、損傷位置が同じでも症状が一致するわけでは無いのですが、私の症状としては、足は全く動きません。暑い・寒い・痛い・痒いなどの感覚もありません。腕は曲げる事が出来る角度や範囲が限られていて、握力が無い状態です。体幹の保持が難しく腹筋・背筋が効かないので、倒れてしまうと自力で起き上がる事もできません。他にも排泄障害や、自律神経の機能を失っています。自律神経を失ってしまうと、汗をかけなかったり、体温調整ができなかったりとなかなか大変で。また、寝た状態から急に起き上がったり、リハビリの起立訓練中に血圧が一気に下がってしまう“起立性低血圧”という症状もあり、なかなか血圧のコントロールが難しく四苦八苦しています。こういった症状なので、家族のサポートやヘルパーさんに支えられながら、車いす生活も9年目を迎えました。

編集部:不慮の事故に遭い、重い障がいと共に生きる。自分なら深く絶望してしまうんじゃないかと思うんですが、そういった事はなかったのでしょうか。

しょうこ:小学1年生から事故に逢うまでの12年間は卓球漬けの毎日を送っていました。卓球が好きで、高校を卒業したら東京の大学で卓球をすることも決まっていたんです。だから、事故に遭い「一生車いすです。一生歩けません」と宣告された時は、一生歩けないという事よりも、一生卓球ができない事実の方が辛くて。そこから立ち直るのは一番大変で、すごく時間がかかるものでした。当時は明るい未来なんて全然想像できなかったんです。

事故に遭ってからは、家族の存在の大きさに随分救われました。元々仲の良い家族ではあったのですが、母が仕事を辞めて献身的なサポートをしてくれり、姉がメイクをしてくれたり。家もバリアフリーの戸建てに引越したりと、物理的にも精神的にも支えられました。

編集部:現在はフリーのWEBデザイナーとして働く傍ら、『くまバリ』という活動をされてますね。YouTubeもその活動の一環という事ですが、どのような経緯で今に至り、どのような活動をされているのでしょう?

しょうこ:手足が不自由な私でも出来る仕事を探した時に、WEBデザイナーという仕事に出会いました。初めは「デザイナーってかっこいいな〜!」って(笑)。これを自分の強みに出来たら世界が広がるかもしれないと思えたんですよね。手先のまひがあっても、小指でのタイピングや、いろいろなツールを使ってデザインは出来るんですよ。学校にも通い、デザインの会社にも勤め、晴れてフリーランスのWEBデザイナーとしての生活を送っています。

『くまバリ』は『くまもとバリアフリープロジェクト』の略で、熊本のバリアフリー化を進めるため2019年8月に立ち上げました。きっかけは、私が車いす生活になって気づけた事の多さでした。家族や友人の存在、人の優しさというソフト面はもちろん、街中の段差の多さや障害のある人には困難な施設などがまだまだ多いというハード面。そういう気づきや感じた事をもっといろんな人に知って欲しいと始めました。「バリアがある」という事を知っているか知らないかだけでも人の気持ちは変わると思うし、何よりバリアフリーを必要としてない人にこそ知って欲しいと思い、YouTubeで発信する活動を始めました。くまバリを一緒に立ち上げた中川典彌さんに動画のノウハウを教えてもらい、手探りで配信し、現在では2019年10月に始めて今では約4万人の方にチャンネル登録をしていただいてます。『くまバリ』としての今後は、WEB上のコミュニティを作ったり、集まった人のスペックを集約して商品開発など出来ればと企んでいます。


動画撮影に使用しているカメラ

編集部:ハンデがありながらも「思いがあれば必ず道は開ける」と常に前を向いて動き続けていらっしゃいますね。今後どのような社会を目指して活動していきたいか教えてください。

しょうこ:ハンデがあるからということで最初から「これダメ、あれダメ」という思考はやめていて。その一つが自分で車を運転する事でした。車いす生活になった時に諦めなくてはいけない事が多かったんですが「自由になりたい!」と一念発起し、2014年に自動車免許を取得しました。手動装置の車がある教習所に通い、自分の車も車いす用に改造してもらいました。今ではいろんな装置や装具を駆使し一人で車を乗りこなせるようになったんです。驚かれるんですが、車いすも自動で収納出来る造りなので、自宅から出先まで自分だけで動くことが出来る事に、最初は心底感動しました。乗り降りや運転に慣れるまでは半年ほどかかりましたが、行動範囲が広がり、事故にあって車いすに乗る前よりも世界が広がった気がします。

新型コロナウイルス感染症が世界中で蔓延した事で、仕事も思うように進まず、通っていたリハビリも中止。車で出かけるのもやめて自粛の日々を過ごしています。体のメンテナンスがうまく出来ずに不安ではありますが、『くまバリ』の今後についてしっかり考えたり、YouTubeの勉強をするなど、何かと頭を動かしています。

これからは“全員が生きやすい社会”を目指していきたいと思っています。ハンデの有無に関わらず、何にでも向き合っていく事で、今はこの人生も悪くないなって思えるようになりました。下ばっかり向いているんじゃなくて、前を向いて明るく楽しく生きていこうとポジティブに考えられるようになったら、いろんな世界が広がって、本当に楽しいなって思えるようになりました。お洒落もしたいし、音楽も楽しみたい。恋もしていきたいと思っています。これから生きていく中でも、絶対“障害”という壁は付きまとってくるし、何かする時に諦めなくちゃいけない事もあると思うけど、私は今命があることに感謝して、これからも自分の人生を楽しんでいければと思っています。

高橋 尚子(たかはし・しょうこ)
1993年熊本県上益城郡山都町生まれ。フリーのWEBデザイナー、ユーチューバー、くまバリ・リーダー。2011年1月に交通事故に遭い、頸髄を損傷。その後車いすでの生活を送る。WEBデザイナーとして仕事をしながら、自身の体験などを発信するYouTube「しょうこちゃんねる」をスタート。

GochamazeTimesCompany

GochamazeTimesCompany

全国各地にライターやプロボノを抱える編集社。タブロイド紙|GOCHAMAZE timesの季刊発行、および、地域の方々と共創するごちゃまぜイベントの定期開催により、地域社会の障害への理解・啓発|年齢・性別・国籍・障害有無に限らず多様な”ごちゃまぜの世界観”をデザインし続けている。

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YouTubeでテンポ良く語る彼女は凛としていて美しく、聡明な女性の印象。しかし実際に会ってみると、無邪気に笑う元気で明るい女性。高橋尚子(たかはししょうこ)さんは車いす生活を送りながら、フリーのWEBデザイナーとして働く傍ら、YouTubeでは約4万人の視聴者に向け“車いす女子の暮らし”を発信しています。そんな彼女のこれまでと、これから望む社会の在り方を聞いてみました。

GOCHAMAZE Times Vol_14 2020夏号

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