GOCHAMAZE timez(ごちゃまぜタイムズ)
いわきから「ごちゃまぜ」 あらゆる障害のない社会へ

働く場をつくることで人生を支える

SPECIAL INTERVIEW
石山 伯夫さん
株式会社マルトグループホールディングス 管理本部・副本部長

いわき市民の食卓を支える「スーパーマルト」。ロゴマークを見れば、思わず親しみを感じてしまう人も多いことでしょう。実はそのマルト、障がい者雇用の分野で、いわきのトップランナーでもあるのです。そこで今回は、マルトグループホールディングスの人事を統括する、管理本部副本部長の石山伯夫さんにインタビュー。障がいを持つ人たちの「働く」を諦めない企業文化、そしてあるべき社会についてお話を伺ってきました。

 

障がいを持つ人たちが仕事を持ち、収入を得て自立した生活を送れるようにと、厚生労働省では、1つの企業が雇用する労働者の2.0%に相当する障がい者を雇用するよう、企業に義務づけています。これが「障害者雇用率制度」です。障害者雇用率制度が導入されたのは、1960年の「身体障害者雇用促進法」が始まりで、当初は1.1%程度だったもの(業種によって違う)が徐々に上がり、2013年に現在の2.0%となりました。民間企業以外にも義務づけられており、特殊法人、国や地方公共団体が2.3%、都道府県などの教育委員会が2.2%などとなっています。

これを満たさない企業からは納付金を徴収し、逆に、雇用義務数より多く障がい者を雇用する企業に対しては、調整金を支払ったり、障がい者を雇用するために必要な施設を整備できる助成金を出したりしています。障がい者雇用は全国各地に広がり、その雇用状況は年々改善しているようです。

しかし一方、いわき市の企業を見てみると、法定雇用率2.0%を満たしている企業はおよそ50%ほど。それ以外の半分の企業は、障がい者を雇用せず、いわば「罰金」を支払ってことなきを得ているのが現状です。障がい者の雇用を地域全体で底上げしていくような動きには、今のところなっていません。

そんななか、マルトの障がい者雇用率はなんと4.0%以上。様々な障がいを抱えた方が、店舗や事業所で働いています。その雇用をまとめるのが管理本部の副本部長である石山伯夫さん。平成8年から人事畑を歩み、マルトで初めて障がい者を雇用した元人事課長でもいらっしゃいます。20年近く、障がい者雇用の最前線で働いてきました。

今現在、マルトにはおよそ4300人の方が働いていますが、知的障がいを持っている方も60人ほど採用しています。法定雇用率もありますが、マルトはもう雇用率どうこうという段階ではなくて、障がいの有る無し関係なく、仕事できる方にどんどん入ってもらうという感じになってきました。普通に働いてもらって、たまたま何か障がいがあっただけ、という認識です。

多いところだと店舗に5〜6人くらいでしょうか。ほとんどはお店で仕事していて、例えば売り場の品出し、これはドライ部門と言いますが、ほかには野菜の袋詰めなど商品を作る仕事などを任せています。お客さんにもしっかり挨拶してくれますし、何か聞かれてわからないときも別の店員を呼んだり、慣れてきたスタッフなら自分でお客さんを案内してくれます。

みんな一生懸命ですし辞めません。普通に高卒で来る子は3ケ月くらいで辞めちゃう子が多いんですが、障がい持ってる方は逆にほとんど辞めずに仕事を続けてくれます。飽きやすい単純作業もじっくり取り組んでくれますし、例えば、知的に障がいのある方でも漢字に詳しい子がいたりして、すごい才能を持ってる子もいますね。大卒の社員よりも優秀な子もいますよ。

障がいのある方を採用するときには、特に採用基準は設けず、新卒であれ中途であれとにかく実習をやってもらいます。そこでこの子はこんな仕事ができるなと判断して、その子もやりたいなと思ってくれれば採用します。中途の場合も、就労支援センターを通して「実習をやらせてもらえないか」という話が増えてきましたね。今は人手不足ですから、とにかく優秀な人にはどんどん働いてもらいたいというのが正直なところです。

 
忙しい中インタビューに応えて下さった石山さん。マルトの制服とも言うべき青いジャケットがお似合いでした。

今でこそ、障がいの有る無しに関わらず、多様な人たちが当たり前に働く環境になったマルトですが、平成8年に石山さんが人事課長として異動してくる前は、障がい者雇用についてほとんど取り組みはなされていなかったとか。現在の法定雇用率4.0%という数字は、石山さんがリーダーシップを発揮して取り組んできたことの結果でもあるのです。

たまたま平成8年に人事部に回されましてね、それまでマルトは障がい者を雇用していなかったものですから、すぐにハローワークさんから呼び出されまして、企業規模も大きくなってきたし、障がい者の雇用が進んでいないので雇用して下さいと指導されたんです。最初はそれがきっかけでした。

最初は、皆さん一般の方と同じで、障がい者に対して何となくのイメージでとらえていました。ハローワークで雇用しろと言われても、お客さんにしっかりあいさつできるかとか、手足に障がいがあったら立ち仕事で大丈夫だろうかとか、もしかしたら仕事に飽きて暴れてしまうんじゃないかとか、その程度の認識だったんです。その程度の認識だったから雇用が進んでいなかったとも言えますが。

一番最初、知的障がいを持つ方を採用したんですが、あいさつはしっかりできるし、店のほうで実習させても何の問題もない。ならばということで1人採用し始めたら、2人、3人と増えてきたんですね。最初は、どこの会社でもそうだと思いますが、新しいことをやるとハードルが高いと思ってしまうけれども、それがクリアされるとどんどん広がってくると思います。


障がい者雇用でいわきのトップランナーを走るマルト。石山さんの功績は大きい。

—障がい者の人生を支える「いわき職親会」

石山さんが人事課長として障がい者雇用に取り組もうというときに、大きな力を貸してくれたのが「いわき市障がい者職親会(以下、職親会)」という組織でした。「いわき地区の障がい者の雇用の確保と拡大」を目的に組織されたもので、養護学校、支援施設、一般企業などが名を連ねています。互いに情報交換をし、連携しながら、雇用の面から障がい者の人生を支えてきた組織です。

石山さんは、ハローワークから職親会の存在を聞き、会に参加。学校の先生や関係機関の方から障がい者雇用について具体的なアドバイスを受けながら、マルトの雇用に活かし続けてきました。職親会とのつながりは年々深くなり、マルトが障がい者雇用を進めるのと同じように、石山さんの役割も大きなものとなり、現在では職親会の代表を務めるまでになられています。

職親会の目的は障がい者の人生を支えることです。一番必要なのは、働いてお金を稼いで、そして自立できるということ。それができないと自立した将来はありませんから。それをみんなで支えていこうという会です。会員数は60ちょっといて、企業もおよそ40社に入って頂いています。この関わりがあったからこそ、今のマルトの障がい者雇用に繋がったと思っています。

職親会は、ネットワークの繋ぎ役でありたいと思っています。学校や障害者施設や地域の企業、ハローワーク、それらの関係機関を繋ぐ役ですね。やはり企業や施設単体では、誰か別の立場の誰かを呼んで話を聞いたり、学ぶ機会を作ったりというのが難しいんですね。それに、障がい者の雇用の問題というのは、どこかの団体が単体で取り組むのは難しい。地域全体で取り組んでいくべき問題なんですね。

お互いが、お互いのことをよく知らないということがよくあります。障がい者を採用したくても、どこに声をかけていいか分からない、企業側とすれば、学生にはこんな技術を身につけて欲しいということがあるんだけど、先生と繋がっていない。先生たちも、どういう採用の方法があるのかよくわからないので授業に生かせない。こういう問題は「単体」で動いてしまうからなんですね。職親会は、そこの繋ぎ役になって、色々なフォローができるんじゃないかと思っています。


2月6日に開催された「いわき市障がい者職親会設立20周年記念式典」。石山さんも会長として壇上に上がった。

—早期から職業訓練を

石山さんたち職親会の皆さんの奮闘もあり、いわきの障がい者雇用の状況は少しずつ改善の兆しを見せています。障がい者の雇用の促進・安定を図るため事業主が障がい者雇用に配慮をした子会社「特例子会社」も、いわき市に本社のある「ハニーズ」と「クレハ」、2つの企業内に誕生しています。しかし、企業の側から見たとき、「教育」の面ではまだまだ課題があると石山さんは考えています。

課題はいろいろありますが、就職のための技術や心構えを、早期から教えていくべきだと思います。今は主に、養護学校の高等部の先生が熱心に取り組んで下さっているけれども、高等部から始めたのでは遅いんです。障がいがあるということは、1つの技術を習得するのに時間がかかる場合がありますから、できれば中学生のうちから様々に取り組みを入れていって欲しいと思っているんですよ。

企業側に「どういう人を採用するか」を聞いてみると、まずもっとも重要なのが「あいさつができないとダメ」と答える方が一番多い。でも、高校2年生から挨拶を教えるのでは遅すぎます。段階を踏んで、小学校の時からしっかり挨拶ができるようになってもらうことが理想ですね。中学校になったら、家族だけでなく色んな人と触れ合うチャンスを作って欲しいですし、高校生は校外実習でどんどん技術を学んで欲しい。これをすべて高校生になった後でやろうとするから難しいんです。

最近では、養護学校ではなく、通常の中学校の特別支援学級から次のステップに進むことも増えていますが、特別支援学級の先生は「養護教諭」ではないので、障がい者雇用で必要な技術を教えることもできませんし、コネクションがないので企業に繋げられない。そうすると、就職が難しくなってしまう。職親会としては、そういうところにもしっかり入っていかなければと思っています。


職親会の会長でありながら「職親会が無くなるのが理想」と語る石山さん。

—「障がい者」として区別されない社会を

平成8年からマルトの障がい者雇用に関わり、現在では職親会の会長を務める石山さん。実はこれ以外にも、福島労働局の障害者就労アドバイザーや、いわき市男女共同参画審議会の委員を務めるなど、就職を巡るダイバーシティの最前線に身を起き続けた方でもいらっしゃいます。石山さんは、障がい者雇用についてどんなビジョンをお持ちなのかを最後に伺いました。

一番の理想は、障がい者として区別されないということです。養護学校も職親会も無くなるのが一番じゃないですか? みんなが普通の学校で普通に暮らすのが理想ですよ。障害の有る無し関係ない。就職したいとなった時、みんながすんなり就職できて生活できる社会が一番です。男女共同参画などもそうですが、だれだれのため、なんて考えているうちはダメでね、全員が普通に生活できるのが平等な社会ですから。そこを目指していきたいと思っています。

私も60歳を超えて、血圧の薬飲んでるんだけれど、それは例えば「知的障がい」と同じですよ。血圧に問題があるということは「血液障がい」ですから。もっといえば私は血管にも内蔵にも障がいがあるということです。それは他の障がいと変わらないんです。それなのに、例えば「精神障がい」とか「知的障がい」だなんだと差別されてしまう。今はまだやむを得ないかもしれないけれど、みんなが普通に生活できるようにならないといけないと思います。

 

information マルトグループホールディングス
http://www.maruto-gp.co.jp/

いわき市障がい者職親会
いわき市障がい者職親会フェイスブックページ

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全国各地にライターやプロボノを抱える編集社。タブロイド紙|GOCHAMAZE timesの季刊発行、および、地域の方々と共創するごちゃまぜイベントの定期開催により、地域社会の障害への理解・啓発|年齢・性別・国籍・障害有無に限らず多様な”ごちゃまぜの世界観”をデザインし続けている。

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