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いわきから「ごちゃまぜ」 あらゆる障害のない社会へ

50年目のいわきから多様性をつくる

SPECIAL INTERVIEW
松本 真紀恵さん
いわき市 市民協働課 文化のまちづくり担当

多様性や社会福祉をキーワードにお送りしているソーシャルスクエアのインタビュー企画、4回目に紹介するのは、いわき市市民協働課の職員、松本真紀恵さん。「文化とまちづくり」の担当で、地域の様々な取り組みをサポートするお仕事をされています。いわき市は来年市制50周年。松本さんの市職員としての考えや思い、そして「次の50年」への思いを伺ってきました。

 

松本真紀恵さんは、いわき市役所の市民協働課で働く職員。市民協働課は、その字の示す通り「市民と協力して働く」ためのセクションです。地域の人たちが実現したいことをサポートするための相談窓口になったり、何かしら準備やお手伝いするということが主な業務。いわき市平にあるいわき市役所本庁舎の正面玄関から入り、1階の一番奥。市民協働課はそこにあります。

その市民協働課のなかにあって、松本さんの担当は「文化のまちづくり」。文化や芸術の面から地域振興やコミュニティ再生を目指し、担い手となる市民に対するさまざまなサポートをしています。毎週末になると、ふらっと市内のあちこちに出かけては、催しや企画に顔を出し、実際に市民と言葉を交わしながら、実際の行政に活かしています。

市民協働課では、いわき市内でまちづくりなどに関わる人たちと接することが多くて、私自身も週末になるといろいろなイベントに顔を出したりしています。そこで感じるのは、今は若い方たちがすごく活躍しているなぁってことですね。実は震災前にも市民協働課に在籍していたのですが、そのときはどちらかというとご年配の区長さんたちが自分の地元のために何とかしたいと動いていたイメージでした。震災後は本当に変わりましたね。

例えば、今、私の関わっている「文化とまちづくり」という分野では、NPO法人ワンダーグラウンドさんが中心となって、文化の面からコミュニティ再生を図る取り組みが始まっています。災害公営住宅の集会所などで作品を作るワークショップなども開催されていますよね。アートに関わる方たちはとても考え方が柔軟。福祉的なスタンスに比べ、アートのほうが自然な形で人が集まってくれるようになりました。本当にすごいと思います。

平のいわきPITで開催されている「ハマコン」というイベントにも注目しています。NPO法人タタキアゲジャパンが中心になって毎月開催されているイベントです。市民が自分でやりたいことや、地域の問題などをプレゼンし合い、みんなでそれをサポートしていくというイベントで、三和町にある廃校の利活用を考えるプロジェクトなどもそこから生まれています。この間はその廃校で行われた芋煮会に参加してきました。

今、そうした活動をしている若い人たちは、いい意味で行政に期待せず、独自のネットワークやアイデアを活用して実際の動きに繋げています。以前は、役場の仕事というと「補助金行政」の面が大きかったのですが、今は逆に行政が皆さんの邪魔をしないように裏方にまわってサポートしていくことが求められていると感じています。

役場が上から目線で「こうだ」と決めるのではなく、地域住民の声を聞きながらサポートに回っていくことが大事ですよね。事業が長続きするには地域の人たちとの協働が欠かせません。


いわき市役所の1階、一番奥にあるのが市民協働課。来年度より「地域振興課」に名称を変えることになっている。


市民協働課のオフィス。地域活性やまちづくりなどに関する補助金事業のとりまとめなども行っている。市民にもっとも近い部署の1つ。


三和町の三阪小中学校で開かれた遠足での1コマ。緑色のベストを着ているのが松本さん。フットワーク軽くあちこちを見て歩く。

—いろんな価値観を認め合える社会こそ豊かな社会

震災前にも、3年ほど市民協働課に所属していた松本さん。その後、観光課や常磐支所を経て、2015年にまた市民協働課に戻ってきました。今年は「文化芸術」に触れる機会が増えたこともあってか、以前に所属していたときよりも「多様性を認め合う」ことの必要性を強く感じるようになったといいます。

今年から「文化のまちづくり」の担当になったばかりなので、配属当初はなかなか方向性が見出せなかったんですが、文化芸術というのは、その人それぞれの感じ方、見え方を尊重するものです。いろいろな考えや価値観、つまり多様性を受け入れるということにつながってきますよね。

障がいを持っている方、高齢者、子どもたち、あるいは外国人、そんな違いを認め合える、人と人として向き合える人づくり。それが「文化のまちづくり」の軸なんだと、最近強く感じるようになりました。市民協働課には国際交流協会も入っているので余計にそう思うのかもしれません。

生まれ育った環境が違うのだから、考え方の違いがあって当たり前だと思うんです。その違いを認め合えないと、どうしても窮屈な世界になってしまい、考えや価値観の違い人たちに対して攻撃的になってしまうものですよね。いろんな価値観がごちゃ混ぜのまま認め合えることができたら、それだけで豊かな社会だと思うんです。

以前、観光の部署にいた時も同じで、いわきの観光資源や物産って本当に多様で豊かだなって思っていました。一見すると「いわきには何もないな」って思ってしまいがちですけど、実は他県の人たちが羨むようなものを、私たちは当たり前のように食べてきていて。ですからヒントは、私たちの日常の中の多様性にあるんだと思います。どれかひとつじゃなくて、いろいろなものがたくさんある。それってまさにいわきの豊かさだという気がします。

私たちが行政の立場で勝手に「これからはこれをPRしていこう」と何かの事業を推進したとしても、市民の皆さんと共有できないものは長続きせずに終わってしまいます。多様性を認め合うには、私たちが勝手に決めるのではなく、観光にしてもまちづくりにしても何でもそうですが、対話することから始めないといけません。ここで待っているのではなく、できるだけこちらから出向くようにしています。

―片方にだけ耳を傾けてはいけない

市民協働課には、まちづくりに携わるような、いわば「やる気のある」市民が自ら足を運んでやってきます。これから事業をやりたい人、町おこしの企画を立ち上げたい人などなど。そうした人たちのために、課の入り口にはたくさんのパンフレットも準備されています。しかしそれでも、松本さんは自分で市民の側に出向き、直接言葉を交わし対話することを何より大事にしているそうです。

自分ひとりで出来ることって限界がありますよね。だから、いわき市に暮らしている皆さんの思いを教えて頂くことなんだろうなと思っています。市民の声を聞き続けていけば、大きな間違いやブレは出てこないはずですから。でも、大きな声だけを聞くわけにはいきません。きっと声を上げることのできない人たちも大勢います。小さな声はここにいても聞こえてこないので、自分が出て行くしかないんです。

大学を卒業していわき市の職員になって、最初の職場が福祉関係で、ずっとケースワーカーとして働いてきました。一人暮らしの高齢者のお宅を訪問したり、老老介護のお宅に伺ったり、皆さんわざわざ市役所まで来られないので、自分たちで出向いて、そこで言葉を交わさないといけません。今の私の価値観の根っこの部分は、ケースワーカー時代に作られたのかもしれませんね。

やっぱり、何かひとつの出来事に対して、片方で主張している声がすべてではない、ということだと思うんです。声を挙げてはいないけれど、生活している人たちがいる。世間一般で言われてるような考えとは違う人たちもいて、そしてその考えは必ずしも間違ってるわけでもない。そこには当然、その方の考える理屈や理由があるんです。自分とは違う考えのなかに、どんな理由があるのかを考えられる職員でありたいと思っています。

例えば、原発事故後の放射能の問題を考えてもきっとそうだと思います。役場という上からの立場でそこにズカズカ入っていっても受け入れてもらえません。自分たちで出向いて、直接お話を伺って、そこから事業に反映させていく。そういうプロセスを大切にしたいですね。


市民協働課だけあり、いつ誰が行っても基本的にはウェルカムだそう。やりたいことがある人は、まずは相談してみては?


市民協働課の窓口には、さまざまな広報資料やパンフレットが。市民の側から、もう少しこの部署を「利用」することもできそう。

いわき市は来年市制50周年を迎えます。福祉や観光、そしてまちづくりなどさまざまな分野で経験を積んで来た松本さんに、これからのいわきの50年について伺いました。

週末とかにいわき市内をまわると、改めていわきっていいところだなぁって思います。いわきには何もないって否定してしまう人も多いですけど、自分たちの地元ですから、やっぱり肯定できるようになったらいいですよね。もっと地元の人が地元のことを知れるような情報発信というものにも、取り組んでいかなくちゃいけないですね。

いわきに就職で戻ってくるっていうとき、起業したいとか、いわきをさらに良くしたいとか、そういう風に思って帰ってくる人ももちろん大事ですけど、何となくいわきに戻ってくる人もたくさんいるし、そういう若者たちが、シンプルに「いわきが好きだから」とか、「いわきって良いところだから」とか、自分を肯定して戻って来れるような雰囲気。それが理想です。

市制50周年というと、大型の企画も予定しているので、そちらのほうに注目が集まると思いますが、子どもたちが普段は体験できないような教育プログラムなども充実させられたらと思っています。すぐには効果は出ないかもしれないけれど、20年後とか30年後にじわじわ効いてきて、「いわきで育ってよかった」と思ってもらえる気がします。そうやって後から効いてくるのが文化や芸術だと思うし、子どもたちにはそういう体験をどんどんしてもらいたいです。

来年は「サンシャイン博」も予定されています。目的は、いわき市外の人たちを誘致して地元の経済を活性化させるということではなく、市民がいわきの素敵なものを再認識すること。来年は、いわきの良さに気づく、すごくいいタイミングだと思うんです。

そして、その素敵なものを次の世代にどう引き継いでいくのか、次の世代をどう育てていくのか。50年という節目だからこそ考えていきたいと思います。次の50年への引き継ぎ。そのための50周年事業にしていきたいですね。

 

profile 松本 真紀恵(まつもと・まきえ)
いわき市常磐生まれ。大学卒業後にいわき市職員に。
福祉事務所、市民協働課、観光課、常磐支所とキャリアを積み、2015年度より2度目の市民協働課に

GochamazeTimesCompany

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全国各地にライターやプロボノを抱える編集社。タブロイド紙|GOCHAMAZE timesの季刊発行、および、地域の方々と共創するごちゃまぜイベントの定期開催により、地域社会の障害への理解・啓発|年齢・性別・国籍・障害有無に限らず多様な”ごちゃまぜの世界観”をデザインし続けている。

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