昨年の「ふくしま高校生社会活動コンテスト」で最優秀賞に輝いた、平養護学校生徒会・ボランティア部。支援される側からする側になりたいと取り組み始めた活動が今、少しずつ広がりを見せています。彼らの思い、そして高校生としてのホンネが聞きたくて、平養護学校にお邪魔しました。
平養護学校生徒会・ボランティア部は、平養護学校では初の部活動として2013年に発足した部です。2年生2人、1年生3人の5名で活動しています。5人が目下、力を入れているのが、いわき市内のイオンの店舗内で献血を呼びかけるボランティア。年に数回、買い物客に声をかけたり風船などのグッズを配ったりして、献血を呼びかけています。
先導するのがボランティア部の部長、地引くん。「みんな最初は初めての経験なので緊張してしまうもの。不安だってあります。ぼくも最初はそうでした。でも、回数を増やしていくうちに、自分にもできるんだと自信になってきました。それが今に繋がっていると思います」と、活動に手応えを感じている様子です。
もう1人の2年生である樋口さんは、次のように語ります。「ボランティアを通じて、みんなお互いさまなんだということを改めて強く思うようになりました。誰かに何かを手伝ってもらったとき、以前は『すいません』と感じていたのが、今では『ありがとう』という言葉に変わってきました。支援する側も、される側も、素直にありがとうと思える。その気持ちを忘れずに、しっかりと活動を頑張っていきたいです」。
彼らが注目を浴びるきっかけになったのが、昨年10月に福島で開催された「ふくしま高校生社会活動コンテスト」。イオンなどでの活動が評価され、平養護学校生徒会・ボランティア部が最優秀賞を獲得したのです。新聞やテレビでも大きく取り上げられ、ボランティア部は一躍注目の的に。1年生の新入部員も、2人入部してきました。
そのうちの1人、茨木君は「活動のことを知って、かっこいいなと思って入部しました。いろいろな人たちと協力して、少しでも誰かの助けになりたいです」と抱負を語ってくれました。もう一人の新入部員である生田目さんも、「今はまだ将来何をしたいか見えてないけれど、部活動を通じて自分のやりたいことや得意なことを見つけていきたい」と、これからの将来のことを話してくれました。
普通の高校に通う学生たちにとって、高校3年間は一種のモラトリアム。しかし、特別支援学校に通う彼らは、早いうちから就職するためのスキルを磨き、自立を目指して学び始めます。障がいを持ちながらも、いずれは自分の力で暮らしていかなければならないからです。自分は何が得意で、何ができ、逆に何ができないのか。徹底的に自分の長所と弱点を見つめ直すことが求められます。
1年生の三浦くんは、「誰かの協力を求めるには、まず自分の障がいを理解することが必要」だと言います。「苦手なものを理解して、これを手伝って欲しいと言えるようになる。逆に、自分の得意なことは、これができますと言えるようになる。人と接し、働き、自立していくためには、自分を知らないといけませんから」。普通の高校1年生とは思えない台詞が、ズバズバと出てくる。これが特別支援学校なのです。
彼らにとってボランティアとは、誰かの助けになることでもあり、自分たちのできることを知るということに繋がります。そして、小さな「自分にもできること」を少しずつ積み上げ、それを自信に繋げていく。誰かを支援することは「自分を支援すること」でもあります。
2年生の樋口さんは、大学に進学することを目標にしているそうです。「将来は社会福祉士になりたい。いわき市の大学に福祉学部があるんです。福祉というと、障がい者とか高齢者とかが思い浮かぶけれど、障がいや年齢に関係なく、助けを求めている人がいます。その人たちのために勉強して、支援する側に回りたいと思っているんです。」
支援される側から、誰かを助ける側に。ボランティアから生まれたその精神は、5人の部員たちを、更なる自立へと向かわせているようです。彼らの力強い言葉と視線に、それを確信しました。私たちソーシャルスクエアも、彼らと一緒に『働くを諦めない社会』を作っていきたいと思います。
information 福島県立平養護学校高等部
http://www.taira-sh.fks.ed.jp/?page_id=33
GochamazeTimesCompany
全国各地にライターやプロボノを抱える編集社。タブロイド紙|GOCHAMAZE timesの季刊発行、および、地域の方々と共創するごちゃまぜイベントの定期開催により、地域社会の障害への理解・啓発|年齢・性別・国籍・障害有無に限らず多様な”ごちゃまぜの世界観”をデザインし続けている。
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