GOCHAMAZE timez(ごちゃまぜタイムズ)
いわきから「ごちゃまぜ」 あらゆる障害のない社会へ

社会貢献の種をまこう! いつか花開くその時に

柴田 賢さん

SOCIALSQUARE西宮店から徒歩5分。山手幹線という大通りを歩いていくと「お洒落な建物だなあ。え?これがディーラーなの?」と疑ってしまうような外観の建物が現れる。ネッツトヨタ神戸 ネッツテラス夙川だ。ネッツテラス夙川の店長柴田さんはごちゃまぜの仕掛け人。店舗の2階にはカフェスペースがあり、様々なイベントが開かれていたり、普段から地域の人たちの憩いの場となっている。

人人の輪

2階のお洒落なカフェスペース(提供:ネッツテラス夙川)

編集部:ネッツテラス夙川では、障害のある方の実習を受け入れていたり、お客様に福祉事業所で作っているお誕生日クッキーを来店時にお渡していると聞いています。障害のある方を受け入れたり、福祉事業所と連携していくことに抵抗はありませんでしたか?

柴田:ネッツトヨタ神戸では理念として、お客様だけではなくネッツトヨタ神戸に関わってくださっている全ての方や社会、地域ともベストパートナーとして常にチャレンジングであるということを謳っています。我々は地域の方々があって初めて店舗を出し、車の販売をさせて頂いています。企業ですからもちろん営利目的でもあるのですが、地域貢献や地域の人たちと一緒に何か出来ないかを考え、地域に還元していきたいと考えています。

ネッツテラス夙川は2年半前に新規店として出店しました。最初は当然ですが、ゼロからのスタートで指をくわえて待っていてもお客様は来られませんので、理念に従って、まずは地域の人たちと何が出来るか考えていこうと思い、現在も様々なイベントが開催されています。

ネッツテラス夙川で開催されたイベントの様子(提供:ネッツテラス夙川)

柴田:地域貢献を考えていくうえでは社会的な生きづらさを抱えていらっしゃる方や福祉の方々と何か出来ないかとは考えていましたが、最初はどうしていけばいいのか正直わかりませんでした。きっかけは宝塚店で勤務していた際にお世話になっていた本屋さんの店長の方が社会福祉協議会(※1)と繋がりがあるという話を聞いて紹介してほしいとお願いしたことでした。

宝塚のあとも、伊丹・西宮と店舗が異動になる度に社会福祉協議会の方を紹介してもらいました。社会福祉協議会を通じて色んな福祉事業所を紹介して頂き、伊丹店では、空き缶回収のルートに入れて頂いて福祉事業所の障害のある方に空き缶を回収してもらったり、店舗の雑草の処理を福祉事業所に依頼したりしていました。また、社会福祉協議会の方よりボランティアの方が活動するのにスペースを借りると費用がかかってしまって大変という話を聞き、ネッツテラス伊丹のスペースをお貸しして、ボランティアの方が認知症講座を開催するということもしました。平日は特にお客様も少ないですし、常にエアコンはかかっていますので、それならスペースを有効活用して頂いた方がいいなと思っていました。

西宮に異動した今でも社会福祉協議会とは連携をさせて頂いています。人と人が繋がっていくことで、こうした新たな繋がりも出来て、様々なご助言や社会貢献をさせてもらえる機会を頂いていて、嬉しく思っています。

(※1)社会福祉協議会|ボランティアや市民活動の支援、共同募金運動の協力など、地域福祉の推進を図ることを目的した団体。

何かを与えるよりも仕事を創ること

編集部:障害のある方たちや福祉事業所と関わるようになって柴田さんはどのように感じましたか?考え方や価値観に変化はありましたか?

柴田:まず、市に貢献するという意味では、しっかり利益を上げて、税金を納めて、地域に還元していって、店舗のある市が裕福になっていけばいけばいいなと。そこまでは我々も考えてわかったのですが、やはり障害のない健常のお客様を相手にすることが多いので、困っている人たちのために何が出来るのか? と想像するのは難しかったですね。

そんな折に福祉事業所の理事長さんとお話させて頂く機会があったのですが、その理事長さんは「何かをしてくれるよりも仕事をもらえる方がありがたいんです」と言っていました。例えばクッキーを店舗で売ることでクッキーを作る仕事が出来る、空き缶を捨てずに残しておくことで空き缶を回収する仕事が出来る。そうやって仕事の種を作っていけばいいんだと。ぼくの中ではちょっと勘違いしていたことがあって、「あ、そういうことで貢献になるんだな」と思いました。その理事長さんにはすごく感謝しています。最初は理事長さんも「何が目的なんだろう?」と疑っておられたのですが…(笑)車椅子を寄付させてもらったり、交流をしていくことで心を開いていってくれました。

今でも実習で障害のある方に来ていただいたりしていますが、社会復帰するためのひとつの手段としてネッツテラス夙川を使って頂けたら嬉しい。ただし、うちに来た方には「お金を稼げるようになったらうちの車を買うんやで」と冗談で言っています。実際に買ってくれなくてもいいんですが、うちで実習をした人がどこかで「あそこでお世話になったから今の自分がある」とか話してくれたら、回りまわって「じゃあ、あそこで車買おうかな」と思ってくれる人がいるかもしれない。そういう風になっていけば嬉しいなと思っています。

困っている人を助けたいという気持ちがあった

柴田:伊丹店で社会福祉協議会と関わらせて頂くようになって少しずつ価値観は変化していったと思うのですが、実際に行動に移すことが出来た要因としては気持ちの余裕もあったと思います。伊丹店は配属された時から売上はありましたので、数字的な余裕がありました。またスタッフにも恵まれていましたから、それらも含めて福祉の方々と積極的に関わっていくきっかけになったかなと思います。

それとぼくは元々エンジニア(整備士)として就職していますので、車が故障して困っている人を助けてあげたいという気持ちはあったんですよ。今までは対お客様とでしか「助ける」ということは叶えられなかったのですが、ぼく自身の役職が変わってきて社会に対して貢献できる立場になってきました。そこで行動に移していけたということは自分としても大きいです。

企業と福祉のごちゃまぜ

編集部:我々はごちゃまぜの社会を作っていくために活動しているのですが、ごちゃまぜの社会を実現するためにはどうしていけばいいと思いますか?また企業側から見て福祉事業所に求めるものはありますか?

柴田:正直なところ我々からすると福祉施設や事業所が何をされているのか全くわからないです。こうやってお付き合いさせて頂くことで理解出来るようになってきましたが、もう少しオープンにして頂いた方がわかりやすいなと思います。また、ネッツトヨタ神戸だけではなく、地域の中には協力してくれるお店や企業はたくさんあると思うんですよね。もっと福祉事業所からお声がけしていってくれたらと思います。SOCIALSQUAREさんも2階のカフェに来てくれた際にお声がけしてくださったから今に至っていますよね。あの時のお声がけがなくて、今までの関係性を築いてこれてなければ、こうして取材は受けていないかもしれません。おそらく、福祉事業所側からお声がけしてくだされば、快く受け入れてくれる企業も多いと思います。ぼくらとしてもどこまで踏み込んでいいのかちょっとわからないので、逆にこういうところに困っているんですと言ってもらえたら、「それは難しいけど、こういうことなら協力できますよ」と提案もしていけるのではないかと。

もちろん我々も受け入れる側として発信はしていかなければいけないなとは思っています。以前はそこをあまり考えられていなくて、ちょっと建物はお洒落だけど普通のディーラーでした。今は、Instagramでも「これほんまに車屋か?」と思うような投稿をしていますので、気になってちょっと行ってみたくなったり、声をかけやすい仕掛けは作っていけているかと思います。

車以外のことでもお声がけしてもらえる店舗へ

編集部:ネッツトヨタ神戸として、柴田さん個人としての展望はありますか?

柴田:「トヨタと言ったらネッツトヨタ神戸やね」とイコールになってもらえることが一番だと思います。よくスタッフには町一番の車屋さんになろうと言っているんですが、そのためには車のことだけではなく、様々なお声がけをしてもらえる店舗である必要があります。お客さんのために地域のために何が出来るか、何をすべきかを常に考えていくことが、結果的に町一番の車屋さんになっていくのだと思います。現在、猪名川で行っている「チョイソコいながわ(※2)」やオンラインストアなど新しい取り組みをしています。流石にオンラインストアで車を売ることは出来ませんが…現在はミニ四駆などを販売しています。今後も様々な新しい展開を考えていけたらと思っています。

個人としては最近はじめてのソロキャンプに行ったのですが、すごく楽しかった反面、どうすれば蚊が寄ってこないかとか、どうすれば車の中で寝やすいかとか考えることも多くありました。コロナ禍では災害時に車中泊することもあり得ますし、快適に車中泊するためにはどうしたらいいか…ぼく自身も車中泊をしたことがなかったので。やったことがないぼくが出来れば、それくらいなら私にも出来そうと思ってもらえるのではないかと思ってブログで発信をしたり、お客様にお伝えさせてもらったりしています。車がただの移動手段ではなく、コトを共有するものになってもらえたら嬉しいなと思いますし、楽しみも倍増するのではないかと思っています。もう50歳で店長という役職ですから、今まで経験してきたことを若いスタッフにどれだけ伝えていけるかというのもぼくの任務かなと考えていますが、伝えるだけではなくて、これからも新しいことには挑戦していきたいなと思っていますね。

(※2)チョイソコいながわ|猪名川市などとの協働事業。人口減少地域での公共交通機関の利便性を確保するために、地域住民のニーズに合わせて路線外・時間外の送迎車両を運行している。

編集後記

社会貢献と聞くとすごく大きなものなような感覚で尻込みしてしまうなと感じてしまう人も少なくないと思いますが、本当に些細なことでも社会貢献になるんだなと柴田さんの話を聞いて気付かされました。また、どんな仕事であっても社会に貢献はしているし、立場が変われば社会に貢献できる内容や大きさも変化していく。災害時のボランティアや24時間テレビの寄付などメディアには取り沙汰されやすいですが、きっとそんなに大きなことをしなくても誰しもが社会に貢献出来ているのだと思います。だから「私には何も出来ていない」「社会に貢献出来てない」なんてきっと思わなくても大丈夫。今自分が出来る範囲で頑張っていけば良い。そんなことを感じたインタビューでした。

柴田 賢(しばた・けん)
1970年大阪万博『太陽の塔』と同級生です。
高校時代に野球部に入り投手として今も草野球を続けております。
夢は還暦野球で投手をルーキーとして出る事です。
趣味は、野球・自転車・スキーで今年ソロキャンプデビューした
ジッとしていられない性格です!

GochamazeTimesCompany

全国各地にライターやプロボノを抱える編集社。タブロイド紙|GOCHAMAZE timesの季刊発行、および、地域の方々と共創するごちゃまぜイベントの定期開催により、地域社会の障害への理解・啓発|年齢・性別・国籍・障害有無に限らず多様な”ごちゃまぜの世界観”をデザインし続けている。

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