GOCHAMAZE timez(ごちゃまぜタイムズ)
いわきから「ごちゃまぜ」 あらゆる障害のない社会へ

まちをつくろう。大人も子どももごちゃごちゃに。

田村 幸大さん

インタビュー中も次々とチャイムが鳴り訪れる地域の人々。
その度に近所のお兄ちゃんのように「おう、どうしたん」と応えるNPO法人なごみ代表の田村さん。
地域のために居場所の創設や教育のアップデートをしてきた田村さんに教育について聞くと「町全体を学校にしたいんよね」と熱く語ってくれた。
田村さんは今まで地域づくりをどのようにしてきたのか。
これからどういった地域を目指していくのだろうか。

NPO法人なごみの最寄駅となる『洲先』。全線単線かつ無人改札のローカルな駅。

子どもの教育に興味があって教師になりたいという気持ちもありましたが、学校というものに違和感を感じていました。教師を目指す人って子どもたちにこんなこと伝えたいとかこんなこと教えたいとか、当然のように熱い想いを持っている人が多い。でも今の教育現場には、子どもと向き合う事と同じぐらい他に時間を割かなきゃいけないことが多くあって、言いたいことも言えない環境があります。それは仕方のない事なんだけど、そういう学校の先生にこそ、自分の伝えたい事を子どもたちに直で伝えてほしいと思っています。学校自体はすぐには変わらないけど、まず学校の外(地域)を変え、社会教育を充実させていくことで教師や学校の負担を少し地域でシェアできるんじゃないかって考えたんです。

そこで2020年に西宮でもはじまったのがコミュニティ・スクールです。簡単に言うと、学校がもっと地域に出ていこう、地域がもっと学校に入っていこうというものです。子どもたちが、地域内で社会体験活動をいつでも出来るようになったり、子どもと一緒になって大人が教室で学んだり、今までなかなか出来なかったようなことがプログラムとして日常的に出来るようになったらすごいと思いませんか?また、学校に色々な目が入ることで変わってくることはたくさんあると思っています。地域の人が学校に入ってくれば、先生も住民と顔見知りになるし、ごちゃごちゃになっていくんですよね。そうやって学校の先生だけじゃなくて地域全体で子どもたちを見守っていける環境を作っていけたらいいなと思います。それが町全体を学校にするということ。

活動する場に鳴尾東という地域を選択しました。元々昔は鳴尾っていう大きな村があって、そのためか結束力はすごく強いんです 。その反面、外部の人が入っていくには時間がかかる事が多いのですが、受け入れてもらう事ができたら、この地域に可能性がすごくあると感じたんです。そのためには、昔からこの地域で暮らしている人たちが、今の地域をどう作ってきたかを知ることも大事。そこを蔑ろにしてしまったら、絶対作り方を間違えてしまうし、咲くものも咲かないから。

誰もが生きやすい地域をいかに作っていくかですが、なかなか見えないけど、色んな困難を抱える家庭は存在します。それは障害だったり、介護で悩んでいる人もいる。そういう人たちがいるっていうことをまず知ることです。でも社会や地域の中では、そういうことに関わらない方が摩擦は起きないんですよね。結果みんな無難な方を選択してしまう。そうやってそれぞれが自分のことだけ考えて生きていたらマジョリティが中心の社会になってきてしまった。「誰もが生きやすい社会」を本当に実現していくには、多様な人が関わることでのリスクは当然あるという前提を受け止められる地域をどう作っていくか。「みんなが自分とは違う人も受け入れて、どんな人でも全部受け止める」。それを目指しましょうっていう事ではなくて、自分ごと以外にちょっと目を向けられる人たちを地域で作っていくということの方が現実的かなと思っています。知り始めたら、自分でもうちょっと知ろうかなっていう人も出てくるし、そしたらそういった人たちに向けて知れる環境とか活動できる環境を作っていったらいいんじゃないかなと思う。

共生型地域交流拠点『まちcafeなごみ』。カフェの前では地域の団体や学生が関わるマルシェも行われている。

この活動を通して見えてきたものは、そうですね…。最初にこの地域に来た時には古民家で集いをやっていたんですよ。そこでは野菜販売をしたりもしていて、小学生がその仕事を手伝ってくれていました。その時の子が今、一緒にNPO法人での仕事をしてくれています。これってすごい嬉しいことだなと思っていて、卒業して大学生や社会人になっても、その時のことを覚えてくれていて地域で一緒に仕事ができる。「おー久しぶりやなー」って再会出来る。地域で活動を続けていたらこういう光景が見えてくるんだなって。

田村 幸大(たむら・ゆきひろ)
1986年明石市生まれ。関西学院大学社会福祉学科を卒業後、NPO法人くろーばーを設立し、社会教育の普及活動を行う。2014年に鳴尾東地域で住民と共に『NPO法人なごみ』を立ち上げ、共生のまちを目指して活動を行っている。

GochamazeTimesCompany

全国各地にライターやプロボノを抱える編集社。タブロイド紙|GOCHAMAZE timesの季刊発行、および、地域の方々と共創するごちゃまぜイベントの定期開催により、地域社会の障害への理解・啓発|年齢・性別・国籍・障害有無に限らず多様な”ごちゃまぜの世界観”をデザインし続けている。

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