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トケル vol.3 地域に広がる・届く 情報発信術

川﨑 渉さん(いわきFC) × 渡邉 陽一(植田印刷所)さん

MUSUBU × いわきFC × GOCHAMAZE トケルvol.3

川﨑 渉(いわきFC)× 渡邉 陽一(植田印刷所)

地域に広がる・届く 情報発信術

いわきFCのスタッフの皆さんと地域プレイヤーの対話を通じて、様々な価値観がごちゃまぜに溶けあう地域づくりを考えたい。そんな思いから、地域団体MUSUBUといわきFCがコラボして始まったトーク企画「トケル」。第3回は、いわきFCプロモーションチーム マネージャーの川﨑渉さんと、いわきで様々なメディア制作に関わるプリンティングディレクターの渡邉陽一さんの二人がゲスト。情報発信について語って頂きました。

対談:2019.1.11 いつだれkitchen
司会:宮本英実(MUSUBU)

宮本:本日はお集まりいただきありがとうございます。今日のテーマは「情報発信」です。地域で色々なプロジェクトが行われていると思いますが、みなさん一番苦労されているのが情報発信や集客、どう巻き込んでいくのか。そこで、いわきFCでマーケティングを担当している川﨑さんと、「igoku」などメディア制作に関わっている渡邉さんのお二人を招いて、いわきでの発信についてお話ししていきたいと思います。よろしくお願いします。

川﨑:いわきFCの川﨑です。現在の担当は、主にマーケティングや発信に関係することですが、広報、試合運営、演出、ソーシャルメディア、Webサイトの管理と怒涛の日々ですね。僕とサッカーの関わりはもう20年以上になります。5歳から兄の影響でサッカーを始めて、大学を卒業するまで続けました。筑波大学時代は監督が風間八宏さん、日本代表にも選ばれた川崎フロンターレの車屋紳太郎選手などが同期でした。

高校の時、バルセロナに遠征に行って、本場のスタジアムを初めて見て衝撃を受けました。普段から7万人以上観客が入るスタジアムで、市民の多くがサッカーのために生きてるって感じで。そういう文化を作れないかと思っていたときに、縁あってドーム(いわきFCの親会社)に入社しました。スポーツマーケティングの部署でいわきの担当だったこともあり、いわきに関わる機会も増えて、一昨年、いわきスポーツクラブの一員となったという経緯です。

渡邉:植田印刷所の渡邉です。ぼくは田舎の印刷屋です。肩書き的に「プロデューサー」みたいなものをやっていますが、根っこは、印刷を通じて発信の肝となる企画を考えるという感じでしょうか。「プリンティングディレクター」なんて言ったりもしますが、クライアントとユーザーの間にある課題、イメージをアップしたいとか、知名度を上げたいとか、そういう課題を解決するために、「いつ、どこで、誰に、どのように」という要素を整理し、デザイナーやライター、カメラマンたちと出し方を決めていく、そんな仕事です。今日はよろしくお願いします。

ゆったりとした雰囲気のなかで、川﨑さんと渡邉さんの対話が始まりました

宮本:まず、いわきFCの川﨑さんに聞きたいんですが、今、とても印象的なのが、いわきFCのウェブでの情報発信ですよね。選手もアカウントを持っていますし、とにかく写真から映像からたくさんのコンテンツが入ってる。昨年はJFLへの昇格もかかっていましたし、自分たちの活動や理念を伝えようという思いが伝わってきました。

川﨑:そうですね。ソーシャルメディアはとても大事にしています。今って、個人が発信できて瞬時に広がるような、つまりマスからパーソナルな時代になってますよね。情報を伝えるチャンネルが多くなっていますし、チームとしてだけでなく、選手からも発信が必要になってきていると感じます。選手によって伝え方も違うし、その違いが新しい共感を呼ぶこともありますからね。だからソーシャルメディアはどんどんやろうという方針で、選手たちも週に1回は投稿しようとか、ルールめいたものもあります。

渡邉:すごいですね。

川﨑:スポンサーに対する価値提供も必要です。ちょっとビジネスっぽい話になってしまいますが、親会社であるドーム社のマーケターとしての役割があるということです。宣伝っぽくなく商品の魅力を発信したり、ドームのファンを開拓・拡大していくようなことも考えなくちゃいけません。ツイッターひとつとっても、管理ツールを使って最も多くのいいねを獲得した投稿について分析したり、タイミングや言葉のセレクトなど、どう発信すれば届くのか、みたいなことをいつも考えています。

渡邉:ウェブは、そういう後追いの分析ができるのがいいですよね。ぼくがやっている紙媒体は即時性はほとんどありません。写真をすぐに投稿することなんてできなくて、写真撮ってレタッチしてトーン整えて印刷して乾かして・・・なんてやってると普通に1週間2週間かかりますから。リーチもそこまで詳しくはわかりませんし、そもそも紙のスペースには制限があるので情報量もウェブには負けます。修正も難しいですし。

でも、その修正の難しさって、間違いを防ぐために色々な人が関与するということなので、裏を返せば信頼性につながっていたりします。情報の量は負けるかもしれないけど、紙は一覧性があるのでクリックやスクロールしなくても情報が目に入ってきます。紙の手触りは五感へ訴求できるし保管性も高い。紙は捨てない限り残ります。なんか営業みたいになっちゃいましたね(笑)。

プリンティングディレクターとして、渡邉さんからは、紙の優位性、特徴なども解説して頂いた

宮本:情報量ってものすごく大事ですよね。ウェブだからって長く書けばいいかというとそうではなく、想いが強すぎても届かなくなっちゃう。

川﨑:はい。送りすぎてもダメなんだけど、全然連絡が来ないと寂しいっていうこともある。だから難しいですよね。今、いわきFCでは、ツイッター、フェイスブック、インスタ、ラインという4つのツールを主に使っています。例えば、ラインだと直接メッセージが届くから、ユーザーにとってはプッシュされる印象が強くなります。だから頻度は抑えます。一方で、ツイッターは流れていくメディアなので、どんどん発信していく。インスタはクリエイティブが全面に出るのでブランドイメージを押し出す投稿の割合を増やしたり。スタッフと共に「この感覚どう?」と擦り合わせながら運用しています。

渡邉:いやあ、ソーシャルメディアの分析がすごいですね。印刷だとチラシを撒く範囲と枚数くらいしかないですからね、分析する要素って。

川﨑:チラシも難しいですよね。この仕事やるようになって紙の広報物をかなり読むようになりました。以前は読む前に捨てることが多かったんですが。いわきFCでも、ファンクラブの皆さまに向けて「LOVE IWAKI PRESS」という紙媒体を年に3回製作していて、結構喜んでもらっています。この時代だからこそ紙のものを受け取る嬉しさってありますよね。

宮本:紙の話で思い出したのが、オリンピックのチケットです。今回のオリンピックのチケットって郵送、モバイルチケット、ホームプリントの3つの受取り方法があるんですけど、私もチケットが当たったのでどうしようかとツイッターをリサーチしてみたら、圧倒的に「記念で紙が欲しいと」言ってる人が多ったんです。紙にはこういう力があるんだなと思いました。

渡邉:自分のものだって言えるのは紙ですよね。紙という実物が情報をまとっている状態が印刷物です。それを所有する喜びみたいなのって、印刷物ならではですよね。それに、いわきって結構紙の力が強い土地柄なんですよ。折込チラシとかがすごく強い。フェイスブックなんていいから折込チラシやってよ、なんて声もあちこちから聞こえてきます。

和やかさのなかに真剣さが垣間見えた会場

宮本:いわきは紙が強いというのは私も感じます。陽一さんがいわきに帰ってきたときはどうでしたか? その頃から紙が強い印象ですか?

渡邉:そうだなあ、確かに紙は強い印象でした。でも、なんだかメリハリがなくて、限られたスペースに情報をぶっ込んだだけの広告が正直多かったですね。ちょっとそれだとまずいな、恥ずかしいなと思いました。それで、何が原因なのかって自分なりに考えてみると、やっぱり企画が成り立ってないんです。東京でやってきた仕事は、全てにおいて、まず企画ありき。

広告は、まずクライアントが代理店に相談するところから始まります。こういう商品をこういう意図で作ったんだけど、こういう媒体で売って欲しい、キャンペーンをやりたいと。で、相談を受けた代理店は、表現を絞って企画コンテを作ります。どういう設定で、タレントがこう喋って、みたいなのが代理店を通じて固まってくるんですよ。映像プロダクションに仕事がくるのはそのあと。企画が全て決まった状態で仕事がくるわけです。

いわきではそんなことありませんでした。つまり企画がないんです。でも、そこで思ったのは、企画が成り立ってないなら自分の意図で表現を作れる、決められるというのは逆に面白いなと。それで、デザイナーやライターとも動くようになったし、自分の立場も、単純に印刷仕事を受けるだけではない、企画の立案から動けるプリンティングディレクター的なものに変わってきました。

川﨑:以前「ドリームチャレンジ」という企画をやったときにアンケートをしたんです。何を見て会場に来ましたかと聞くと、「折込チラシを見てきた」という人が一番多かったんですよ。子供を持つご家庭は特にチラシが多かったです。そういう地域性も考慮しながら、どんな人にきてもらうかで媒体を選んでいく。それが大事ですよね。

宮本:誰に届けたいのかってことですよね。私は以前、音楽の業界で働いていましたが、例えば新曲をプロモーションしようというとき、「どういう人が、どのシチュエーションでこの曲を聞いたらだれかにメッセージを送りたくなるか」を想定して、テレビCMがいいのか、ヘッドフォンしながら歩いたときに見えるよう街頭の看板に広告を掲載するのがいいのか、とするとどの場所か、みたいなことを細かく考えていました。

川﨑:いまの時代、伝える手段は無数にある。そこで大事なのがやっぱりブランドだと思うんです。世界的なサッカーチームって、エンブレムを見ただけでチームの歴史やストーリー、戦う姿勢まで見えてくるものです。私たちも同じで、いわきFCの投稿を見たら、チームが掲げる「魂の息吹くフットボール」が伝わるようにブランドを作っていきたいと考えています。どのメディアに情報を掲載するにしても、フォントや色合いなど大事にすべきトンマナ(トーン&マナー)を明確に設定しているのも、ブランドを意識しているからです。

遠くて近い、近くて遠い。そんな存在感のある選手をどう作り上げるか、という川﨑さんのお話

渡邉:いやあ、本当にかっこいいなって思いますよね。ただ、すごくかっこいいがゆえに、引いちゃう人もいるんじゃないかって思うところもあるんです。強いチーム感を出すと、ぼくもそうなんですが、自分の応援なんて必要ないんじゃないかって思っちゃう。そのくらい強いイメージですよね。

例えば、ぼくだったら、いわきFCスターの選手が、小名浜の場末のラーメン屋さんとかでラーメンすすってるポスターとか面白いと思うんですが、強さやかっこよさを押し出したブランディングをすると、そういう振り切り方が難しくなっちゃうかなと。ぼくは個人的には物語が人を惹きつけると思っています。いわきFCのチームとしての発信だけではなくて、選手の物語が見える、選手と地域の関わりが見えるような発信も、あっていいんじゃないかって思います。

川﨑:ラーメン屋での撮影、やりたいです(笑)。確かに、私も感じますが、チームだけではなく「選手のファンになる」人もたくさんいらっしゃいます。普段ピッチで激しいプレーをする選手がファンサービスで話したら可愛い一面があった、とか。けれども、オフィシャルないわきFCのアカウントで、選手がカメラに向かってピースした写真も載せにくい。最近では世界のビッグクラブも選手のオフショットを結構載せてたりするので、やってみたいですね。

渡邉:やっぱり、人って人を応援するものだと思います。人の顔が見えてくる、選手の弱さとか、苦悩とか、喜びとか、そういう、人にフィーチャーしたものが発信されてくると、ぼく的にすっとチームに入っていける気がしますね。

もっと地元目線で開かれたブランディングを展開しても良いのでは? という渡邉さん

宮本:そこも大事なポイントかもしれませんね。ウェブでの発信って、確かに認知度は上がるんだけれど、もうあと一歩につながらない感じもするんです。フェイスブックのイベントページで「興味ある」が何百人といるのに、実際に来てくれる人って少なかったり。いわきFCは、特に今季はホームの観客数平均2000人というノルマもあります。その最後の一歩、押しの発信、そのあたりについてはどんな作戦を考えてますか?

川﨑:代表の大倉からも2000人集めるのがお前の仕事だって言われています(笑)。具体的に何をすべきかはむちゃくちゃ考えていますが、ハッキリとした答えはまだ出ていません。色々なメディアを網羅しつつ強弱つけながらやるしかないですね。ここまでソーシャルメディアについて語っておきながらなんですが、逆に注力してやりたいのはテレビや新聞といったマスメディアです。言ってもソーシャルメディアはある程度個人の興味・関心によります。テレビや新聞の場合は不特定多数の人の目に触れます。新聞の場合は福島民友さんに日頃からたくさん取り上げていただいていますが、これまで自分たちからは積極発信できていなかった媒体なので、テレビの露出は増やしたいと考えてます。

渡邉:観客動員の条件があるんですね。強いだけじゃダメなんだ・・・・。

川﨑さんと渡邉さんの真剣なやりとり。とても聞き応えがありました

川﨑:いわきFC盛り上がってるじゃんって言っていただけるのはとても嬉しいのですが、もっと熱狂できる空間を作りたいと思っています。先ほどテレビの話をしましたが、それと同時に、クラブハウスの地元の釜ノ前地域の人に来てもらうために、スタッフが家を一軒一軒回ってポスティングしたりもしています。まず大前提としていわきに適した、地元に密着した発信を探っていきたいですね。

たまにスタッフと話してるのは、興味ない人を自分に振り向かせるってことは、女性を誘うのと一緒だなと。ラインで電話番号を聞くにはどうすればいいだろう。どのタイミングで、どういう言葉で・・・みたいな(笑)。というのは冗談ですが、ウェブサイトを見に来た人、ツイッターを見てくれた人に、どういうメッセージを残すのか。受け取る側の気持ちを考えながら試行錯誤していくしかないと思っています。

渡邉:タイミングと頻度大事ですよね。1回デートして間が空くと、いつの間にかゼロベースに戻っちゃうことあるじゃないですか。そこがゼロになる前にもう1回積み上げないと、次のデートに続いていかない。なるほど、女性を落とすにはどうすればいいのかを考えながらやる広報、アリですねえ(笑)

宮本:今日は、ウェブと紙、お二人の扱うメディアの違いなども伺えて、とてもいい対話の時間になったと思います。まだスタジアムに行ったことのない渡邉さんを、川﨑さんがどう落とすのか、じっくり見ていきたいと思います(笑)。今日は本当にありがとうございました。

最後には記念撮影も。終わった後も、盛んに意見交換が行われていました

川﨑 渉(かわさき・わたる) 
いわきFC プロモーションチーム マネージャー

1992年滋賀県生まれ。岡山県作陽高校、筑波大学と名門校でのサッカー経験を経て、大学卒業と同時にいわきFCの親会社である株式会社ドームに就職。アンダーアーマーの営業やスポーツマーケティングを経験し、2018年3月よりいわきFCのマーケティング業務を担当。現在は、プロモーションチームマネージャーを務める。趣味はいわきで覚えたゴルフ。https://iwakifc.com/

渡邉 陽一(わたなべ・よういち) 植田印刷所 代表取締役 / igokuプロデューサー

1978年福島県いわき市生まれ。大学在学中にスペースシャワーTVにて映像制作に触れる。卒業後、(株)東北新社にてTVCM制作に携わり、様々なステークホルダーの中でプロジェクトを進める経験をする。震災の翌年にいわきに戻り、創業100年を超える家業を継ぐ。”企み”や “情報”といった無形のものを形に起こすことを生業としている。http://ueda-printing.com/

主催:MUSUBU
協力:株式会社いわきスポーツクラブ、いつだれKitchen
メディアパートナー:GOCHAMAZE Times

 

GochamazeTimesCompany

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全国各地にライターやプロボノを抱える編集社。タブロイド紙|GOCHAMAZE timesの季刊発行、および、地域の方々と共創するごちゃまぜイベントの定期開催により、地域社会の障害への理解・啓発|年齢・性別・国籍・障害有無に限らず多様な”ごちゃまぜの世界観”をデザインし続けている。

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