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いわきから「ごちゃまぜ」 あらゆる障害のない社会へ

SPECIAL INTERVIEW
今泉 俊昭さん
就労移行支援事業所つばさ 就労支援員/cafe & zakka 晴レル家 スタッフ

 

いわき市平窪の高台の上にあるカフェ「晴レル家」。天然酵母のパンを使ったホットサンドや、淹れたてのおいしいコーヒーが楽しめるカフェです。実はこちらカフェ、障害者の就労支援や地域交流に活用したいという目的で、社会福祉法人が立ち上げました。カフェのスタッフでもあり、就労移行支援事業所で就労支援員として活動されている今泉俊昭さんに伺ったのは、このカフェに込められた、思いについて。

 

店内に入ると目に飛び込んでくるのは、ひときわ美しいブルーの天井。店内には軽やかなボサノヴァが流れ、厨房からはおいしそうな匂いが漂ってきます。コーヒーを頂きながら改めて店内を見回してみると、店内の椅子も照明も、デザインが1つひとつ違っていました。

 

手づくりっぽいものがあったり、革張りの高級感のあるソファがあったり、ブリキのバケツや灰皿をシェードに使った個性的なランプがあったり。でも手づくりの暖かみのおかげでしょうか。1つひとつはバラバラなのに、空間には不思議な統一感があり、思わず長居してしまうような居心地の良さが感じられました。

 

このカフェの立ち上げに関わったのが、今回のインタビューの主人公である今泉俊昭さん。普段は障がいを持った人たちの就職を支援する福祉サービス事業所「つばさ」で就労支援員として働きつつ、週末や休日などに、カフェ「晴レル家」の厨房に立っています。

このカフェは、平養護学校や、私たちの運営母体であるいわき福音協会の事業所など、多くの福祉系の建物に囲まれています。普段は車いすで生活されている方もいますので、なかなか街中のレストランや喫茶店に行くことが難しいんですね。そこで、福祉施設が立ち並ぶ場所の真ん中にカフェを作ろうということで、このお店が完成しました。

 

この場所に地域の人を呼びたい、そして地域の人たちと周辺施設で生活している障がいがある人が同じ空間で食事をする。そんなお店を作りたいという思いがあり、お店をやるということが決まってから、協会のほうに「ぜひ自分に店の内装や運営を任せて欲しい」とお願いして、店づくりに関わらせてもらうことになりました。実は、休日などを利用して家具や雑貨のハンドメイド作家としても活動してるんですが、その経験が役に立つんじゃないかと思って。それに前からこういうお店をやりたいと密かに思ってたんです。

 

壁塗りや椅子や机の制作は、就労移行支援事業所に通ってくる皆さんと一緒にDIYで作りました。デザインにはすごくこだわりましたね。福祉って色を出したくないと思ってたんですよ。逆にこの福祉の町にオシャレを持ち込みたいと考えてました。使っている天然酵母のパンも系列の施設が作ってるパンなんですが、「障がい者の施設」として見られるのが嫌で、やっぱりいいものを作りたい、いいものを提供しないと続かないってずっと考えてきました。

 

それに、雰囲気がオシャレな場所だったら、施設に通う人も少しオシャレして行こうかなとか、ちょっと前向きな気持ちになれると思ったんです。おかげで、けっこういろいろな人たちが来てくれるようになりました。車いすの人たちと一般のお客さんが一緒に食事している風景を見るのは本当にうれしいです。

 

青空を思わせる美しい天井の色も、今泉さんのセレクト。とても雰囲気がよく、思わず長居してしまいます。

 

外の景色をぼんやりと眺めながら、おいしいコーヒーに舌鼓。とても贅沢な時間。

 

—諦めずに、小さな自信を積み重ねる

 

普段は就労移行支援事業所「つばさ」で働いている今泉さん。障害を持った人たちの就職を支援する支援員としてのキャリアは、ジョブコーチとして活動していた期間を含めるとすでに10年。以前は市内の住宅メーカーに勤めていたそうですが、社会人の経験を活かし、経験者の立場から、働きたいという思いを持つ人たちの支援を続けています。

 

我々のところに来て何をするとかいえば、技術的な何かを学ぶというより、どんな会社に入っても大丈夫なように社会人としての基礎的な知識とスキルを身につけることです。最終的な目標は、その人の特性に合った仕事を見つけ、就職してもらい、就職先で継続して働いてもらうこと。そこでもっとも重要なのが、その人の「特性を見る」ということだと思っています。

 

利用者には、様々な障がいがありますし、その日の気分に浮き沈みがあったり、人によって性格も違います。それに、得意なことも不得意なことも違います。そうした特性を就職先と共有することができないと、トラブルになって精神的な負担が増してしまうこともあるんです。ですから、特性を見つけたら、それを企業側に伝え、理解して頂くことが大事なんですね。

 

でも、私たちが出向いて人事部の方にどれほど詳しく説明して理解して頂いても、障がいを持った方が働く現場の方が、その人の特性を理解していないと意味がないんですね。ですから、私たちのほうから現場に赴いて、この方はこんなことが得意ですよ、でもこれは不得意だからこうした方がいいですよ、といった説明をしていくんです。

 

障がいを持っている方って、ずっと「できない」と言われて育ってきている部分があって、自分に自信が持てない状態の方も多くいらっしゃいます。ですから、我々はちょっとずつでいいから自信を感じてもらえるような支援のあり方を考えています。これはできた、できなかったことは次にやってみよう、そうやって小さな「自信」を積み重ねていく。それは「つばさ」のほうでも、カフェのほうでも同じです。

 

インタビューに応えて頂いた今泉さん。休日などは自ら厨房に立って料理も作る。

 

関係する施設で作られた雑貨の他、県内外のクラフト作家による雑貨も並ぶ。

 

—人の特性に合わせた仕事の細分化

 

—小さな自信の積み重ねのなかで、様々な障害を持った人たちが共に学び、成長を感じながら日々を過ごす。そしてその自信が就職へと繋がる— 今泉さんのそんな理念は、実はカフェのとある場所に象徴的に表れています。それが、椅子です。

椅子のなかには、木を切る所から始め、みんなで一から組み立てたりリメイクしたりして作ったものが入っています。でも、「みんなで1脚ずつ椅子を作ろう」と言って作ったわけではありません。「ヤスリをかける」とか「色を塗る」とか、作る人の特性に合わせて仕事を細分化してから、それぞれができる部分の仕事を任せて、チームとして椅子を作ることを心がけました。

 

簡単な作業しか関わっていなくても、「自分でできた」という自信が得られますし、完成したものを使って喜んでくれる人がいる。その人の笑顔を見る。そういう体験が本当に大事なんです。椅子1つ完成させるのは無理でも、工程を分解して仕事を細分化していけば、何かしら自分のスキルを活かすことができる仕事に巡り会えるんですよ。

 

ヤスリがけしかしなくても、ペンキ塗りしかできなくても、できたことを評価し、その自信を積み重ねていく。そんなプロセスを大事にしています。先日、一緒に椅子を作った男性が店にいらして、その男性が自分の親を連れてきて「これおれがやったんだー」なんて言ってるのを見たんですが、そういう光景はすごくうれしいですよね。

 

やっぱり「できない」と決めつけてしまうことがよくないんです。自分ひとりでは就職できないから私たちのような人間を頼ってくれてるわけですよね。そこで私たちが「できない」と決めつけたらそこですべて終わりじゃないですか。そうではなく、可能性を見つけてあげて、ここなら力を発揮できるんじゃないかって得意な部分を見てあげる。それが一番だと思いますし、そういう考え方でできたのが、この椅子であり、このカフェなんです。

 

みんなで作った家具だけに、今泉さんの店に対する愛着はひときわ強い。

 

福祉団体が運営するカフェとは思えないほどあか抜けたデザイン。向かって左手は野菜直売所にもなっている。

 

—働くことの喜び

 

今泉さんの話を伺うと、今泉さんが常に「就労支援施設から出た後」のことを思い描いているのがわかります。障がいを持つ人が、施設のなかに居続けるのならば今泉さんのような支援員がキーパーソンですが、社会に出たら、その鍵は私たちに手渡されます。私たちがどう受け入れ、社会の一員として、手を取り合ってどう成長していけるのか…。それを考えるきっかけが、カフェ「晴レル家」にはあるような気がします。

 

一般企業で働き出すと皆さん劇的に変わるんです。顔つきが変わってきますから、それを見るのが面白いですね。皆さん「自分も社会のために役に立ってるんだ」という自覚が生まれるからかもしれません。自分のやっていることが誰かの役に立ち、それで対価を得られる。そういう「働くことの喜び」の原点みたいなものに、いつも気づかされます。

 

福祉というと、いろいろな人たちに対する福祉がありますけど、就労支援の福祉は、できなかったことができるようになる、成長していく、そういう過程を一緒に進んでいけることに大きなやりがいを感じることができるんです。その意味では、就職させて終わりではなくて、働き続けていくことを支援するほうが、むしろ大事かもしれませんね。

 

先日、1人就職が決まって、小名浜にある材木屋さんで、小さな中小企業なんですね。今まで障害者を雇ったことがなくて、それでもいろいろな要望を聞いてくれて、様々な面で配慮して下さっています。大企業だとすでにノウハウやシステムがあって、そこに組み込まれるといった面もありますが、中小企業ならではのアットホームな雰囲気が、とてもいいなあと思いましたし、中小企業の多いいわきって、実は働きやすいのかもしれません。

 

初めて障害者を受け入れるような会社をどんどん増やしていければいいと思っています。まだまだ働ける企業はたくさんありますし、働きたいのに働けてない人もたくさんいます。そういう人をうまく結びつけていきたいですね。就労支援の仕事、これからもずっと続けていきたいと思っています。

 

●profile 今泉俊昭 Toshiaki Imaizumi
1977年神奈川県生まれ。中学のときにいわきに移住。
大学卒業後は住宅メーカーに就職するが、一念発起して社会福祉法人いわき福音教会に転職。
現在は、就労移行支援事業所「つばさ」で就労支援員を勤めるほか、
家具作家としても活動中。さまざまな作品を残している。

 

information cafe & zakka 晴レル家
http://ameblo.jp/cafe-hareruya
店舗:〒973-8405 いわき市平上平窪羽黒40-65

GochamazeTimesCompany

GochamazeTimesCompany

全国各地にライターやプロボノを抱える編集社。タブロイド紙|GOCHAMAZE timesの季刊発行、および、地域の方々と共創するごちゃまぜイベントの定期開催により、地域社会の障害への理解・啓発|年齢・性別・国籍・障害有無に限らず多様な”ごちゃまぜの世界観”をデザインし続けている。

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