GOCHAMAZE timez(ごちゃまぜタイムズ)
いわきから「ごちゃまぜ」 あらゆる障害のない社会へ

みんなの表現(あかり)が灯る場所

「表現」は、その人の「声」そのもの。繊細にその声を聴き合い共鳴しあえる、そんな場所が秋田にありました。いろんな人たちが交流し創作をして、ごちゃまぜに過ごすことのできる「うちのあかり」さん。ひとり一人の小さなあかりはやがて地域の灯台のように眩くひかり、生きづらさのある人や社会の枠組みからはみ出してしまう人や心の、道標となっていくのかもしれません。

『うちのあかり』は、地域活動支援センターとして「いろんな人たちの居場所」に「アートと対話」を掛け合わせた居場所でありアトリエですね。本当にいろんな人に来ていただいていて、年配の方も、子供連れで遊びに来てくれる女性のひとも。メインは何かしらの障害がある方とか学校や社会に居場所がない方などです。「家」に近い場としてありたいな、という思いがあって開いた場所なんですが、結果的に普段交わらないような方同士が交差できる場所でもあるかなと。 社会の枠組みから何かしらはみ出してしまう人や心に、寄り添う存在でありたいなと思っています。

-アートリンク「うちのあかり」外観

私自身、秋田公立美術大学に勤めているので美大生が頻繁に来てくれています。学生も含めていろんな人が日々、一緒におしゃべりしたり創作活動をしたりしています支援者と支援される側があいまいな形で場に馴染んでいく雰囲気が良いなと感じています。

作品はその人の「声」だと思うんですよね。LINEのスタンプひとつとっても、黙っているということもその人の「声」ですよね。それと同じように作品がある。「声」が発露しやすいように一歩踏み込みたいなという思いがあります。

福祉と芸術に興味を持ったのは、滋賀県の福祉施設から生まれた陶芸作品に感動したことがきっかけなんです。人間の根源のちからを感じました。振り返れば、昔から友人も少なくてみんなで盛り上がる話題にも全然興味がなくて、ちょっとズレた子供だったんですよね。クラスの同級生より、支援学級に通う障害のある子の方に親近感を感じていたんです。

-さまざまな画材や資材

 「うちのあかり」をやる前に、大学で月1回程度近くの支援学校の生徒さんと学生が一緒にアートを楽しむ会をやっていました。生まれた作品がどんな暮らしや日常から出てくる表現なのか気になって、もっと継続的にやっていきたいなと思ったんです。支援学校の教員をしていた経験があるんですが、学校現場で抱いた疑問や葛藤…「自分が自分らしく振る舞う」ことが許された環境は作れないものか、という悔しさみたいなものが今の活動の原動力になっています。滋賀県の施設をはじめ、アート・表現することを大切にしている先輩施設に色々教わりながら今に至ります。

-お話ししてくださった安藤さん 

地域との関わりも意識していて、例えば地域にある空き地をつかって「たきびっこ」という企画をしています。地域の方も一緒になって焚火と食を楽しむようなイベントなんですが、うちの仲間たちと地域の人たちが一緒に楽しむ「風景」がつくれたなと思いました。それまでうちのあかりの中で起こった些細だけれど素敵なやりとりを外部に伝えるのはすごく難しかったんですね。でもこの「たきびっこ」の企画を通じて地域の方とも顔見知りになったりかかわる機会ができて、SNSでも反応をいただけたりします。

-創作活動中の様子

 今後の展望としてはアトリエがもう一つできる予定で、空き家を改修している最中です。うちの仲間たちと学生が一緒になって創作活動ができるような場所を目指しています。暮らしの拠点と創作の拠点が一緒にできたらいいなと思っていて、事業としては福祉の枠組みを当てはめながら、うまくやっていければと思います。

 また「うちのあかり」がある秋田市新屋地区は昔から支援学校や福祉施設が多いエリアだと思います。美大の学生がよく地域の空き家を活用して展覧会を開いているのですが、もっと学生と地域の多様なひとが出会える機会になるといいなと思っています。地域で孤立している人や見えなくなってしまっている人たちと繋がって、関わり合える、ケアしあえる。この地域に「うちのあかり」がある理由みたいなものができていくと良いなと思っています。

これからもあらゆる自分らしい表現が受けとめられて、許される場としてありたいなと。まずはこのエリアで、絵を描いても良い、踊っても良い、歌っても良い、いろんな「声」で対話していける、そんな場所を目指しています。

壁一面の作品たち

安藤郁子(あんどう・いくこ)|NPO法人アートリンクうちのあかり 代表理事
秋田公立美術大学ものづくりデザイン専攻 教授
陶芸家として、個展・グループ展多数。 

GochamazeTimesCompany

全国各地にライターやプロボノを抱える編集社。タブロイド紙|GOCHAMAZE timesの季刊発行、および、地域の方々と共創するごちゃまぜイベントの定期開催により、地域社会の障害への理解・啓発|年齢・性別・国籍・障害有無に限らず多様な”ごちゃまぜの世界観”をデザインし続けている。

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