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いわきから「ごちゃまぜ」 あらゆる障害のない社会へ

福祉とは、そんなに小さなものじゃない

ソーシャルスクエア西宮特別対談
対談 / 玉木幸則さん×松隈茂雄
福祉とは、そんなに小さなものじゃない

障害とは何かを問い続けるNHKのバラエティ番組「バリバラ」に出演し、いくつもの名言を生み出している社会福祉士の玉木幸則さん。実はその玉木さん、ソーシャルスクエア2店舗目を出した兵庫県西宮市で障害福祉の現場に携わっています。現場の抱える課題から「福祉とは何か」という深遠な問いに到るまで、ソーシャルスクエア西宮店の松隈茂雄がじっくりと話を伺いました

松隈 玉木さんには、西宮店をつくる1年前から関わらせて頂いて、改めてこのように話を伺う機会を作って頂いてありがとうございます。私たちの会社は障害福祉ではやはり新参者です。以前からずっと福祉一本で関わって来た玉木さんにとって、私たちのような存在はどのように映っていますか? 

玉木 ボクにとっては松隈さんがありがたいのは、こうしていつも議論して、課題が見えてくると「宿題ですね」なんて持って帰ってくれることで、とても頼もしいと思ってるんです。それに新参者って言っても、提供する形は時代の変化に応じて変わっていかないとダメだと思います。ずっと社会福祉法人って看板掲げてやってるところは、これまでの形を崩したくない。それが結果的にサービスを受ける人にとって有効だったらいいけど、必ずしも有効やとボクは思ってない。だから新たにやりたいと思ってくれる人たちを歓迎したいと思ってるんです。でも、マインドがなければ新しくてもダメですけどね。 

松隈 ありがとうございます。新と旧って関係で思い出すのは、少し前に、埼玉のデイサービスの送迎を利用した人が、車内に放置されて亡くなってしまった事故です。あれ、もし運転の業務を外注していたら起きなかったんじゃないかと思うんですね。普通のバスの運転手なら落し物があるかどうかとか確認しますから。サービスや日常業務に慣れが出てしまう可能性もありますし、業界の中だけでやるのではなく、役割分担が必要なんだと。 

 

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的確な言葉で障害福祉の抱える問題を指摘して下さった玉木さん。

 

玉木 結局、利用者を人として見てなくて、福祉サービスの商品としてしか見てないから起きたんだと思います。人として見てないから、慣れてしまって、放っておいたり、気づいても「まあいいか」となってしまう。そして誰も責任を取らない。あれは事故というか犯罪でしょう。 

松隈 福祉の業界って「最後まで自分たちでやりきる」ことにこだわってしまいがちですが、役割は分担した方がいいんじゃないかと思います。特に私たちは、自分たちに足りない部分もあって、他の方々に協力してもらいながら、各々得意なことを分担しあってやろうと思っています。経験が浅い分、私たちのような新規参入組に対しては「ちゃんとやるのか?」など様子を見られたり、疑いの目で見られてしまったり、というのはあるように感じますが。 

玉木 新しい事業所に事業指定を出す時、書類が揃っていれば指定を出すというやり方にも問題があると思います。申請の時にね、その組織が、どんな理念を掲げていて、どんな武器や強みがあるか、逆にどんなところに問題があるかどうかを見極める目を持っていない。申請する側も、行政をパートナーではなく真実を隠すべき相手として見てしまう。 

松隈 私は、監査や指導とかに向かって準備するのが好きじゃなくて。本来は日常的に頑張って、そのままの姿が検証されないといけない。そこで課題や注文が出てきてもクリアすればいいだけですから。監査を通すためじゃない。誰のための福祉なんだと。だからこそ「自分のところだけでやらない」という選択肢が必要で、外部の目線を入れて、常に自分たちを見てもらうことが大事ですよね。 

 

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ソーシャルスクエア西宮の松隈も現場で抱える課題やモヤモヤを玉木さんにぶつけました。

 

玉木 もう、今の時代、ひとつの事業所で利用者を支え続けるのは不可能です。そういうことに気づいてる人は、いろんな人たちや仕組みと繋がってきています。既存のところは、自分のところだけでやって来たという自負もあるんでしょう。あれもこれもと、役割を厳格に切り分けていく傾向にあります。でもね、それをやると役割の間に隙間ができます。その隙間をどうするんだって話ができないとダメなんです。 

松隈 そうですね。福祉事業所だけでなくて、例えば求人媒体の編集者とか、大学のコーディネーターとか、業界の外の人たちも交えていくってレベルまで広げていければ、私たちでは追いつかない発想も生まれて来るはずですよね。 

玉木 その意味で西宮の自慢しとくとね、こんなに障害福祉関係のケースワーカーが動ける地域ってないと思いますよ。西宮って、いい意味でやかましい団体とか人が大勢おるから、色々と要望を、まあイチャモンもありますけれども、いろんな団体が言ってくるから、聞かざるを得ない状況がここ何十年も続いてきてます。本当に聞いてくれる地域は、珍しいと思っています。積み重ねがあるから、ちゃんと話だけは聞いてくれるんです。たらい回しなんてことを起こしちゃいけない。相談して来るってことは、それだけ困ってるってことだからね。 

 

関わる人たちがみんなで“のりしろ” をつくる 

玉木 さっき、役割と役割の間に隙間ができるって話をしたけど、間を埋める人がいるだけじゃ、溝は埋まらないです。何が必要かっていうとノリシロです。本当は自分の仕事はここまでだけど、でももうちょっとだけ頑張ったらええんちゃうかって、ちょっとだけ頑張る。それが増えていくと隙間が狭くなる。それだけのことなんです。 

松隈 本当にそうですね。制度上、私たちの事業所を利用できないと判断されてしまったとしても「利用できません」だけじゃ現状は変わらない。仮に利用できなくても、私たちで出っ張りを作って、関係機関と関わりながら、どこが混じってくれたら石が動くのかを相談し続けることが必要です。 

 

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障害とは何か、という問いを繰り返すことが必要だと語る玉木さん。

 

玉木 実際に色々な領域で実績も上がってきてるし、就労移行支援事業所とかも増えてきてます。だけどね、支援の手が届いてない人をどうするかって議論がもう始まってないといけないんです。大事なのは、今は解決できなくても、話を聞いて語り続けて、適切なところに繋ぐことができる人間です。色々なところに話を聞き続けるなかで、あ、これはここかなってピンポイントで手が動く。そのためには、障害とか、高齢とか、貧困とか、そういう細かい言葉で切り分けちゃダメなんですよ。 

松隈 相談業務というのは本当に大事ですね。相談してストレスが生まれたら相談の意味がありません。簡単に答えが出ないケースが多いですが、「無理だ」と言わずに、できるだけアイデアを探す。それでも無理だっていう時にも考え続ける。そうやって未来に向けた課題を議論していくことが本当に大事ですね。 

玉木 これからの時代は、ますますダイバーシティやから、障害だけじゃないです。それだけ考えてたら息詰まるわけです。それよりも、人が人として生きていくためには、どういうことができるんやろうかって考え続けるしかないんですね。それは簡単には答えは出えへんけれども、諦めたらアカン。例えば、障害者であっても、母子世帯だったら母子の関係の制度が使えるかもしれない。障害の制度が使えなくても子育ての仕組みで支えられるかもしれない。福祉ってね、そうやって広がってくるはずなんです。 

松隈 確かにそうですね。ある意味での厳しさも必要だと思います。自分でできることは自分で行動することを促すような。 

玉木 下手に障害があるからってやりすぎちゃうんですね。ボクは必要に応じて「だから?」って返しちゃう。「障害があるゆえに困ってることと、あんた個人で困ってることと違うよね」って。これは自分でやりませんか、踏ん張ってみませんかってことも、ボクらとして提案できないとアカンわけで。福祉という看板を背負ってたらなんでもやってくれるって常識を取っ払っていくこともしていかなアカンです。 

 

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お忙しいなか終始笑顔で取材に応えて頂いた玉木さん。その言葉の熱量に驚かされました。

 

松隈 福祉って表現自体、なくてもいいのかもしれませんね。 

玉木 福祉ってね、国語辞典には「全ての人に等しくもたらされる幸せ」って書いてるだけ。高齢とか、障害とか、子供とか、貧困とか書いてないです。ということは、人の幸せをみんなで考えていくことが福祉ってことになるでしょ。される側・する側とかの話じゃなくて、それは局面局面で変わっていくわけです。そこをわかってるかどうかで大きいと思います。 

松隈 そういう人たちが組織のなかに入っていくと、組織が活性化すると思うんです。今って、福祉や障害の専門知識を持った人が採用されても、結局は障害者雇用のセクションでしか仕事を任されないことが多いけど、本来は、会社の人事部に入って様々な提案をしたり、より多くの人たちが活躍できる組織作りに関わることもできるはずです。もっと多くの人たちにメリットがあるんだってこと訴えていきたいですね。 

玉木 まだそこまでは無理やね。教育の現場がそうなってない。福祉に関係する大学もそうだけど、専門バカが教えてるから発想が広がらないんですよ。だから、管理とか保護とか、そういう視点が強くなって、抜けない。 

松隈 確かに福祉っていうと、就職とか、職業訓練みたいなイメージが強いですね。でも、本来、福祉ってそうじゃなかったはずですよね。 

玉木 今は「社会福祉学」とかいうけれど、そもそも福祉って、社会学も心理学も経済学もいろいろな分野が寄せ集まって成立する学問のはずです。でも、どんどん福祉が狭くなってきている。それを拡張することが必要なんだと思います。福祉って、ほんとはね、人間学っていうか、倫理とか思想とか、そういうレベルの話なんです。それなのに、今のイメージだと「困った人をどう助けるか」って、しょうもない話になってしまってる。 

松隈 おっしゃる通りですね。福祉が「みんなの幸せを考えること」ならば、福祉はもっともっと大きく捉えられていいはずです。その意味でも、福祉にはそういう力があるんだということを、色々な組織の人たちに、堂々と訴えていかないといけないのかもしれません。玉木さんには今日も力強い言葉をありがとうございました。 

 

profile 玉木幸則(たまき・ゆきのり) 
1968年兵庫県姫路市に仮死状態で生まれる。4歳そこそこで肢体不自由児療育施設に入所。小中学校は、地元の普通学級で学ぶも、高等学校だけ泣く泣く養護学校へ。日本福祉大学社会福祉学部卒業、1992年自立生活センター・メインストリーム協会に入職以後、障害者の自立生活運動にのめりこむ。現在は、社会福祉法人西宮市社会福祉協議会 相談支援事業課 相談総務係 係長。内閣府 障害者政策委員会委員等を務めながら、NHK Eテレ みんなのためのバリアフリー・バラエティ「バリバラ」にレギュラー出演中。 

profile 松隈茂雄(まつぐま・しげお) 
1976年福岡県福岡市生まれ。大学進学とともに関西へ移住し、親バカでもあり、釣れない釣りを週末の日課として西宮で生活中。イベント会社を経て、外国人エンジニアの採用/雇用コンサルティングにて10年間勤務。雇用側の施策や生活サポートにおける事業に従事し、ダイバシティ及びインクルージョナリーな組織・環境創りに興味を抱く。その後、障害者支援の業界に参画し、現在のSOCIALSQUAREにて勤務。事務局長兼スクエアマネージャー。 

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全国各地にライターやプロボノを抱える編集社。タブロイド紙|GOCHAMAZE timesの季刊発行、および、地域の方々と共創するごちゃまぜイベントの定期開催により、地域社会の障害への理解・啓発|年齢・性別・国籍・障害有無に限らず多様な”ごちゃまぜの世界観”をデザインし続けている。

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