INTERVIEW

人に向き合うことこそ国際交流

SPECIAL INTERVIEW
ベンジャミン マクマレンさん
いわき市観光交流課 国際交流員

いわき市の姉妹都市である「タウンズビル市」があり、土地の形も似ていることから、何かと福島と繋がりのあるオーストラリア。外国からの移民を受け入れ、様々な人たちが暮らすその国から、1人の男性が外国青年招致事業でいわき市にやってきた。いわき市観光交流課に勤めるベンジャミン・マクマレンさんは、このいわきの「ダイバーシティ」をどう見ているのでしょうか。話を伺ってきました。

今年2月、ソーシャルスクエア内郷が企画した「ごちゃまぜ農業体験」に、1人の外国人が参加していました。流暢な日本語と、いわきの野菜を楽しそうに味わう表情が印象的だったその男性が、今回お話を伺ったベンジャミン・マクマレンさん。地方自治体が総務省、外務省、文科省及びCLAIRの協力の下に実施している外国青年招致事業「JETプログラム」で来日。現在は、いわき市の観光交流課に勤めています。

マクマレンさんの現在の仕事は、公の使節団などが来市した際の通訳や、いわき市に関する情報の翻訳、いわきの観光情報などをまとめた英字のフリーペーパーの編集など多岐にわたりますが、持ち前の素晴らしい日本語と、いわきの地理や文化を学ぼうという積極さで日々の仕事をこなしています。休みの日も、自転車にまたがって市内のあちこちに視察に行く日々とのこと。

JETの参加者は実は全国に5000人以上いるんです。その中で国際交流員は300人ぐらい。基本的には、翻訳や通訳などの仕事や、国際交流事業を通じて日本と外国の架け橋になるという役割ですね。私の場合は、そこにいわき市からの情報発信の仕事が入ります。例えば、いわきに住んでいる外国人向けの広報誌や、いわきの姉妹都市など外国に送る情報誌の制作のために、市内のイベントを取材したりもしています。

JETプログラムに応募した時から、私は福島県を希望していました。それでいわきに配置されたんです。私のようにJETに応募する人は、「ここに行きたい」という希望を持ってやって来る人が多いのですが、私の場合は、どこに行くというより、自分の存在がどこなら一番役に立つかを考えて決めました。やっぱり福島は震災もありましたし、風評の問題もありました。そこで、外国に伝えるために自分が役に立つんじゃないかと。

やはり風評の問題は大きいですね。震災があってから、外国には福島のネガティブな情報ばかりが伝わっていきました。今でも大丈夫? と感じている人が外国には多いはずです。だから、外国人である私が今の状況を自分なりに調べて発信することで、福島は悪い場所じゃないんだと、むしろとても安全で、魅力もたくさんあるんだというメッセージが発信できるんじゃないかと考えたんです。

 

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ごちゃまぜ農業体験inファーム白石でのマクマレンさん。いわきに来たばかりの頃の出来事。

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インタビューはマクマレンさんの職場であるいわき市役所で。貴重な時間を割いてインタビューに応えて頂きました。

—日本の「おもてなし」はすごい

もともと日本文化に興味があったというマクマレンさん。震災後の2012年に2週間の短期留学で初来日。その翌年の2013年には日本語を学ぶため二度目の来日を果たし、成城大学へ留学。そして1年間の留学を終えた後、改めてJETプログラムに応募し、今回の三度目の来日でいわきに定住するに至りました。

いわきのいろいろ魅力はありますが、気に入っているところは、私の出身地であるニューカッスルに似ていることですね。人口も同じくらいです。実はシドニーからニューカッスルの距離は、東京からいわきくらいの距離と同じくらいなんです。海も美しいですし、ちょっとした都市部もあって田舎もある。そんな雰囲気がいいんですよ。

それに、やっぱりいわきの「ハワイ」が気に入っています。スパリゾートハワイアンズもとても面白い場所ですし、こうして市役所の皆さんがアロハシャツを着てアピールしてる。こんなところ日本にありませんよね。週末は自転車であちこちに行くのが趣味なんですが、平の町から少し行くだけで、田んぼや山、海がある。そういう色々なものがある感じもとても好きです。

もう日本に慣れ過ぎてしまって驚かなくなっていますが、日本の「おもてなし」はやっぱりすごいですね。自分ではなくお客様を大切にする気持ち、本当に素晴らしいと思います。しかも、ホテルやお店だけじゃなくて、一般の人たちもそうです。友人の家に遊びに行くと、家族の方がご飯をたくさん用意してくれたり、布団も敷いて待っていてくれたり。日本の人たちに共通する「当たり前」のものになっているのは本当にすごいですね。

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マクマレンさんが取材や編集を手がける『Time Out』。いわき市内のトピックを市内の外国人に向けて伝えている。

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視察などに付き添ったり、取材に行くとき以外は、オフィスで編集作業や翻訳作業を担当。

—国際交流とは「人」と向き合うこと

いわきに来てもう少しで1年。日本語も上達し、いわきの地理にも明るくなり、仕事は順風満帆のようですが、来日直後は、異なる文化の日本で苦労もあったとマクマレンさんは語ります。特に地方は、外国人を頻繁に目にするわけではありません。外国人に会っても何を話していいかわからない、どう接していいかわからない。そんないわきの人たちに接することも多かったそうです。

やっぱり外国人に対してどう接していいか分からないという人は多いと思います。特に地方ですしね。外国人が日本語を話せるか皆さん心配なのでしょう。でもそれは当然のことですし、いわきの皆さんは、すぐに皆さん親切に接して下さいます。やはり話して交流して、お互いを知り合おうとすることが大事なんだと思います。

国際交流というのは、言葉や人種、国の壁を越えて交流し合うことです。外国人と接すると、見た目や国籍というものを意識してしまいうこともあると思いますが、それは大きな問題じゃありません。その「人」個人と向き合うということが重要だと思います。

私のふるさとのオーストラリアは多民族の国です。人種も、アジア系、アフリカ系、ヨーロッパ系、それぞれの人たちが住んでいます。それだけ多様な人たちがいるので、どこから来たかとか、どこの血が入っているのかなんてことは聞いても仕方がない。大事なのは人種ではなく、その人の趣味や考え方だと思います。その意味では、ダイバーシティに対する考え方は、やはり他民族国家のオーストラリアのほうが進んでいるかもしれませんね。

ただ、オーストラリアは少し個人主義が強くて、物事をハッキリと言う傾向があります。個人主義が進むとあまりにも利己的になってしまいます。これに対して日本は集団主義の国のように思うことがあります。悪く言えば、みんなが周囲に合わせ過ぎてしまうんですが、例えば震災のとき、皆さんが冷静に静かに対応していたのを見て、あれは欧米の国では難しいと思いました。何にでも良い面と悪い面があるんですね。

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日本のアニメを通じて日本語に興味を持ち独学で勉強。短期留学を経ただけとは思えない日本語力に脱帽。

マクマレンさんがこれから取り組んでいくことが、いわきの情報発信。すでに市内の外国人向けのフリーペーパーの仕事も任され、海外に向けての情報発信にもあたっています。風評被害の払拭が大きなテーマですが、外国に向けて情報発信する時、マクマレンさんはどのようなことを意識しているのでしょうか。

風評被害については、やはり正しい情報を発信するということが一番です。外国に目を向けてみると、福島の正しい情報、例えば空間の放射線量とか、食品の安全性、それから震災からの復興の情報、これらの情報がまだまだ足りていません。未だに「福島は危険だ」と思っている人もいます。だからこそ、粘り強く正しい情報を発信し続ける必要があります。

それから、ポジティブな情報を発信することも重要です。自然の美しさや、食べ物のおいしさなど、いわきについての情報をポジティブに発信していくと、今までネガティブなイメージを持っていた人たちにも届いて、「実際にはこうなのか」と理解してくれるようになるはずです。私の母も、福島に行くと決まったときとても心配しましたが、私から福島の状況について説明したら納得してくれました。

これからまだまだ情報発信を続けて、自分もいわきのことを勉強しながら、外国にもいわきの素晴らしさを伝えていきたいと思います。JETプログラムは1年ずつの契約ですが、契約を更新し続けて、どこかで彼女も見つけて(笑)ずっといわきで暮らしていけたらいいですね。

 

profile Benjamin Mcmullen(べんじゃみん・まくまれん)
1992年オーストラリア・ニューカッスル市生まれ。ニューカッスル大学を卒業後、2012年に初来日。
2013年からは成城大学で日本語を学び、2015年よりJETプラグラムで三度目の来日を果たし、いわき市市役所へ。
市民協働課を経て、現在は観光交流課で働く。趣味は「チャリ旅」。休日は市内各地に出没。

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小松理虔|ヘキレキ舎
小松理虔|ヘキレキ舎
フリーライター。いわき市小名浜在住。UDOK.というオルタナティブスペースを主宰しつつ、地域に根ざした企画、情報発信、地産商品のブランディングや営業支援などを業務とする個人事務所「ヘキレキ舎」を運営中。