GOCHAMAZE timez(ごちゃまぜタイムズ)
いわきから「ごちゃまぜ」 あらゆる障害のない社会へ

よりよい人生の伴走者として

SPECIAL INTERVIEW
竹田 真理さん
精神保健福祉士/医療法人社団石福会四倉病院所属

精神医療の現場に関わる福祉士の皆さんは、どういう思いで日々患者さんと接しているのか。そんなことを伺いたくて、精神科の専門病院である四倉病院を訪れました。お話を伺ったのは、精神保健福祉士の竹田真理さん。諦めないこと、真剣に向き合うこと、そして、地域のこと。竹田さんの語る言葉、そして思いの中に、福祉の原点がありました。

 

いわき市四倉にある四倉病院。そばを国道6号線が走っていますが、車の音は遠く、病棟の周囲にはたくさんの草木が植えられ、静謐な空間が広がっています。竹田真理さんは、この四倉病院に勤める精神保健福祉士(略してPSWと称される)。うつ病や統合失調症など精神疾患を持つ患者さんや、精神障がい者に対する相談援助などを行っています。

精神保健福祉士の仕事は、障がいを持つ方の社会復帰や自立の促進を図ること。患者さんと向き合い、担当医師と治療方針を相談しながら、日常生活を送るための訓練の場を紹介したり、就労を目指す施設や事業所などを案内するなど、包括的なサポートを行う仕事です。

患者さんやご家族から頂く相談は、こんな仕事がしたい、こんなことができるようになりたいといったものから、退院後の生活場所の確保、入院のための資金の相談など、本当に様々です。私の仕事を分かりやすく言えば「その方の人生をサポートすること」と言っていいかもしれませんね。人生に一歩踏み込んでいく感覚。精神科のソーシャルワーカーのやりがいかもしれません。

私の弟が病気を患っていたこともあって、高校生のとき、自分の今後の進路を考えていて、たまたま職業に関する本を読んだときにソーシャルワーカーのことを知りました。患者さんやご家族の悩みを聞いたり、その悩みを解決するためにお手伝いする仕事があるんだと知って、「ああ、私がやりたいのはこれだ」と決めたんです。


精神保健福祉士として患者に向き合う毎日。

―私たちが諦めたら、患者さんも諦めてしまう

福祉の道を志した竹田さん。東北福祉大を卒業後、地元であるいわきの四倉病院に入社。数年間働いたあと、結婚を期に静岡に移住します。その後四倉病院に戻ってきたのが2011年。いわきを出て、静岡で「外の世界」を体験してきたことで、福祉に対する考え方や、地域との関わりについての見方が変わったと、竹田さんは静岡での日々を振り返ります。

静岡では、全国でも珍しい、障がい児の通所施設で仕事をさせて頂いていました。子どもたちって大人を試すようなところがあって、児童の分野って苦手意識があったので、これまで自分で進んで仕事にすることはありませんでした。でも、これもご縁かなと思ってお引き受けしたんですが、子どもたちにはたくさんのことを教えられました。

自閉症の子どもたちの5歳児のクラスでしたね。最初、ある男の子に「お前なんて足手まといだ」とか「邪魔だ」なんて言われて、きっと私を試していたんだと思うんですが、本当に心が折れそうになって。でも無我夢中で子供達と接していくと、少しずつ信頼関係が生まれていって。最後の頃には、私が熱で休んだりすると「竹田先生がいなくて寂しかった」って手紙をくれたり、本当に力をもらいました。

お母さんたちも一生懸命なんです。親がいなくなっても一人で生きていけるようにしないといけない、という思いが本当に強くて、そうしたお母さんたちの姿勢にも影響を受けました。家族のサポートがなければ、自立というのは本当に難しいものです。本気で取り組むお母さんたちの献身的な姿が、精神保健福祉の原点を改めて思い直させてくれた気がします。

在宅のケアマネージャーの仕事を経験できたこともよかったですね。地域の中で支えるというか、地域の中での精神科病院の役割について深く考えることができました。大学を卒業してずっと四倉にいたのに、病院のことはわかっていても地域のことを分かってなかったなと。そのうえで、私たちが果たすべき「地域の窓口」という役割について、もう一度考えるきっかけを与えてくれました。

地域で在宅を支える事業所の皆さんは、直接外部とやりとりする機会が多いからなのか、私たちのように病院に留まる人間に比べて、とても熱い思いを持っていらっしゃると感じました。そこで痛感したのは、私たちが諦めたら患者さんの自己実現がかなうわけがないということでした。その思いは今も強くあります。

 ―よりよい人生の伴走者としてあゆむ

諦めないという信念。それは、ソーシャルスクエアが掲げる「はたらくを諦めない」という理念にも通じます。竹田さんは受け持っていた方、2人をソーシャルスクエア内郷に送り出しました。入所した2人はそこで様々なカリキュラムを受け、そのうち1人が実際に就職を決めています。スクエアの取り組みもまた、竹田さんに小さからぬ影響を与えているようです。

これまで2人ほど、ソーシャルスクエアさんで支援を行ってもらいました。1人は、もともと発達障害で自宅に引きこもっていたんですね。私はデイケアを勧めたんですが、お母さんが「就労に向けて近道のところに行かせたい」という意欲があって。心配はありましたけれど、今は障害者枠で一般企業に就職されているんです。本当にすごいなあと思いました。

スクエアの皆さんが1人の人間として対等な立場で接してくれたのがよかったのでしょう。ご本人がこの病院に来始めた頃は私に目も合わせてくれなかったのに、今は1人で外来に来てあいさつしてくれるようになりました。すごい進歩だと思います。福祉畑の方だけでないという開かれた環境も、本人にとってプラスに働いたのかもしれませんね。

改めて、障害のあるなしに関わらず、みんなが希望を持っていける社会にしないといけないと思うようになりました。福祉の分野って、どうしても生産や利益をもたらさない分野だと思われて、何事も後回しにされてしまいがちです。だからこそ、自分たちの思いや状況をしっかりと発信できるような人を育てていかないといけない、と思っています。

私の義父は義足なんですが、私の子や甥っ子は、生まれた時から祖父は義足という環境で育っているので何とも思っていない。義足を外して床に置いていると「じいじ、足が落ちてるよ」なんて言うんですね。物珍しく障害者を捉えるのではなく、性格や特徴として見られるようになって欲しい。身近にそういう人たちがいたら身近に育っていけると思うんですね。だから、ソーシャルスクエアの掲げる「ごちゃまぜ」はとても素晴らしいと思います。そういう社会になって欲しいし、そういう子どもがたくさん育っていって欲しいですね。

数々の経験を通じて、竹田さんが今、辿り着いた答え。それは「真剣に向き合う」ということ。とてもシンプルな言葉ですが、精神医療の現場に立ち続けている竹田さんの言葉だけに、とても重いものがあります。そしてそれは、何も福祉の世界でのみ必要なものではありません。人と人との関わりにおいて、もっとも大切なことではないでしょうか。まさに、竹田さんのお人柄を表す言葉でした。

患者さんって、私たちのことを本当に信頼できる職員なのかをよく見ています。こちらがいい加減な対応をしたら、この人に相談してもしょうがないと思われてしまう。だから真剣に向き合わないといけません。真剣に向きあうからこそ、私たちの投げたボールを受け取ってもらえて、そしてそのボールが返ってくるんだと思います。大切なのは共に歩んでいくということ。ドライブする時に助手席に座るような、一緒に伴走していくような、そういう関係でありたいですね。

ここを退院されてグループホームに行った患者さんから「今までは一生ここにいるしかないんだって諦めてたけど、竹田さんに出会えて、私にもできるかもしれないと自信になったよ」と言って頂いたことがあります。大変なこともあるけれど、こういう贈り物があるから続けていけるのかなって思います。その気持ちを忘れず、諦めずに患者さんと向き合っていければと思います。

 

profile 竹田真理(たけだ・まり)
1978年いわき市生まれ。東北福祉大学卒業。
卒業後、四倉病院に精神保健福祉士として勤務。結婚を機に静岡へ移り、障害児通所施設に勤務。
数年後、夫とともにいわきへ転居。ケアマネージャーとして地域で活動した後、現職。

GochamazeTimesCompany

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全国各地にライターやプロボノを抱える編集社。タブロイド紙|GOCHAMAZE timesの季刊発行、および、地域の方々と共創するごちゃまぜイベントの定期開催により、地域社会の障害への理解・啓発|年齢・性別・国籍・障害有無に限らず多様な”ごちゃまぜの世界観”をデザインし続けている。

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