GOCHAMAZE timez(ごちゃまぜタイムズ)
いわきから「ごちゃまぜ」 あらゆる障害のない社会へ

グリーンバード的市民参加論

松岡真満×横尾俊成さん

まちをかっこよく、きれいにするために全力でゴミ拾いをする活動「グリーンバード」。全国にその組織が広がるなか、いわき市を拠点にする「グリーンバードいわきチーム」は、2015年の新体制発足後、ゴミ拾いに留まらない様々な「ごちゃまぜ」イベントを企画してきました。今回は、いわきチームリーダー松岡真満が、NPO法人グリーンバード代表の横尾俊成さんと膝を突き合わせて対談。市民の地域参画について、そしてグリーンバードの未来について語り合いました。

 

松岡 今日は、お忙しいなか企画に参加して頂いてありがとうございます。いわきチームは2013年の発足で、わたしは新体制になった2015年12月末からの参画になるのですが、改めて発足当時のことから振り返ってもらえますか?

横尾 グリーンバードは、2002年に表参道、原宿で立ち上げられた団体です。表参道の商店街のなかに「けやき会」という青年部があって、その活動の一環としてスタートしました。もともと路上のゴミが多くて業者さんにお願いしてたんだけど、それでも足りずに青年部でも自主的にやらなくちゃいけなくなって。ゴミが全然減らなくて、じゃあどうすれば捨てる人を減らせるか考えた時に、1つは「拾う側」を目立たせて、捨てにくい空気を作ろうと。そして2つ目に、ゴミ拾いに一度でも参加したら大変さがわかって次には捨てなくなるだろうから、とにかく一度でいいから参加してもらう。その2つを活動方針に据えて、グリーンバードプロジェクトというのが始まったんです。

松岡 今では本当に大きな広がりになりましたね。色々な地方から「うちにもやらせて欲しい」なんて連絡がたくさん来るんじゃないですか?

横尾 これまで意識して広げてきたつもりはないんだけど、月に3、4通、連絡が来ます。でもほとんど断っちゃう(笑)。やっぱり強いチームを作りたいんです。発足当時は「ボランティア」って言葉自体が新しいもので、「ボランティアや社会貢献なんて偽善だ」って言ってる人も結構いました。でも、今は興味深い調査があって、地域貢献やボランティアに実際に参加してるのは社会全体の2割で、反対に地域貢献なんて全然関係ないと言ってる人も2割いるんだけど、残りの6割は「機会があったらやってみたい」層だというんですね。つまり、6割もの人が潜在的にはポジティブってことです。でも現状を見てみると全然パイが広がってないわけです。

松岡 残り6割の人と、すでにボランティアをやっている2割の人と合わせたら8割。社会全体の8割の人たちが実際に動き始めたら社会は変わりますよね。

横尾 だから6割をターゲットにしないといけないんだけど、いかにもゴミ拾いしてそうな、どことなくマジメそうな人がリーダーになると、6割の人たちが見向きもしないんです。だから、リーダーはちゃんと選びたいと思ってるし、はじめから「地域のために貢献したいのでグリーンバードの仲間に入れて」なんて連絡をもらっても、ちょっと待てよってなっちゃうんです。

松岡 はじめから「地域貢献」って言っちゃうと意識の高い人ばかり集まる団体になっちゃって、地域から浮いた存在になっちゃうじゃないですか。でも、グリーンバードは違っていて、ビジョンは明確なのに「ユルさ」もある。

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いわきのグリーンバード活動の様子。子どもたちにも活動が広がってきている。

横尾 地域づくりも同じで、既存のまちづくり団体に若者が行かないじゃないですか。6割の人たちが潜在的にポジティブなのに、未だに自治会や町内会は「若者に来て欲しい」と言ってる。そこに大きなギャップがあるんです。本当に勿体ないですよ。せっかく活躍できるフィールドが地域のなかにたくさんあるのに、若者はそれに見向きもせずにカンボジアとか行っちゃう。もったいねえなぁって。

松岡 そういう意味では、グリーンバードには地域のまちづくり団体と若者を橋渡しする「中間団体」みたいな役割があるかもしれませんね。1回でもゴミを拾うことで、そこで地域と接続されて、それが縁で地域のお祭りとかにも参加するようになったりする人もいますし。

―6割に訴える

横尾 そうだね。橋渡しをする団体が取っ付きにくかったら、誰も橋を渡ってくれないじゃん。その話で思い出したんだけど、最初、ソーシャルデザインワークスの北山代表に声かけられたときは、これ絶対に断るケースだなって思ったんです(大笑)。だって、障害福祉とか就労移行支援とか、とても硬い取り組みをされてるから。でも、ウェブサイト見てみたらすごく素敵で、実際に会ってみたら北山さんも松岡さんも変な人だし、これは良いなって。

松岡 あー(苦笑)そうですよね…。私たちの仕事は一応「障害福祉」で、国の法律に基づいてやってることなので「障害福祉」とか「就労支援」とかになってしまうんですけど、じゃあ私たちが本当にやりたいことって「障害福祉」かっていうと、その言葉では正直捉えきれない。むしろ、既存の「障害福祉」っていうものを変えなくちゃいけないと思って活動してるくらいです。

横尾 うん、わかる。だからこそ、支援される側とする側の逆転を生み出していきたいよね。以前、障がいを持った子どもとお母さんが来たことがあったんだけど、ゴミを拾うことで「ありがとう」とか「助かったよ」とお子さんが声をかけられて、お母さんが感動したみたいなんです。「うちの子はずっと支援される側だけだったのに、誰からかありがとうって言われたのは初めてだ」って。

松岡 障害福祉の一番の問題は教育だと思っています。いろんな価値観が形成される初等教育の段階で、障がいのある子はこっち、ない子はこっち、というように分離してしまうんです。それなのに社会に出たらいきなり多様性を求められるようになる。それじゃうまくいくはずないんですよ。障がいってなんだろうとか、障がいがあってもこういうことができるんだってことを感じていけたら、変な偏見や恐怖感を抱くことは減るんじゃないかと思っています。

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グリーンバードいわきチームによる「ごちゃまぜイベント」。市内の寺院で音楽イベントを行ったときの模様。

横尾 障がいのある子どもに接した時に、どう接したらいいかわからないと感じてしまう子どもは多いだろうね。普通に接していい、ということもよくわからない。だから機会を作るってことが大事なんだと思う。

松岡 だから、いわきチームでイベントをやるときは「ごちゃまぜ」というキーワードを入れています。障がいの有無とか国籍とか年齢とか一切関係なく、いろんな人たちが集まって良いイベントですよって意味を込めてますし、そういうゆるさを最初に出したら、本当に多様な人たちがイベントに来てくれるようになりました。

横尾 誰が来てもいいですって言わないといけない社会って本来苦しいけど、でもそれは言わないといけないし、本当に来れるごちゃまぜの場所が実際にあるって大きいよね。

―社会を変えるために目指すべきこと

松岡 今日の話を聞いてて、改めて大事だなって思ったのは、社会を変えていこうというときに、いったい誰に訴えていけばいいかってことだと思うんです。2割の人だけが本気になって動いていても、それと同じ2割の人が「そんなの意味がない」と思っていたら社会は変わりませんから。残り6割の人たちに訴えないと。

横尾 なんで社会課題が沢山出てきたかって言うと、これまで社会を担ってきた2割の人たちが、結局その問題を解決できなかったからなんですよ。だったら今までと考え方を変えないといけない。変えるためには、今までずっと参加してきた人が参加し続けたらダメ。違う発想で解決してもらうしかないと思います。つまり、結局この6割にアプローチすることが世の中を変える力になる。

松岡 いろいろな人たちが集まると、また新たなグループができますよね。先日、いわき市内で行った「ごちゃまぜスポーツフェス」では、過去最高の70人が参加してくれました。通常グリーンバード活動は、ゴミ拾いだけを行うんですが、今回はスポーツフェスの1つのコンテンツとしてゴミ拾いを盛り込みました。そうしたら、トラックの荷台1杯分くらいのゴミも集まりましたし、「ぜひごちゃまぜイベントでコラボしたい」なんて声も寄せられました。これはもっと広げられるなって思っています。

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ごちゃまぜスポーツフェスでは、イベントとゴミ拾いを同時に開催した。

横尾 グリーンバードも、これからどんどんチームを増やしたいと思っていて、2020年までに100チームにしたいなって、なんとなく思っています。あとは子どもたちへのアクション。こんな価値観もあるんだ、こんな生き方があるんだってことを、子どもたちにも知ってもらう機会を作る。実はもうキッザニアとコラボしたり、小中高一貫校と提携してみたり、すでにやってるものもあるんだけど。

松岡 一緒です。子どもは大きなキーワード。10年、20年後まで続けていくことが大事ですよね。子どもたちにいろいろな体験をして欲しいということももちろんですが、子どもたちの体験を通じて、お父さんお母さんも考えるようになるんです。そして、そういう場を、多様な形で提供していきたいと思います。そういえば、いわきチームが作ったグリーンバードの子ども向けのスタンプカード、本部でも気に入って頂けたみたいでありがとうございました。

横尾 あのカード、めっちゃいいよね。まさにこういうところに期待してるのよ、いわきにチームには。だから基本はグリーンバードで何をしてもいいと思う。いわきから新しいグリーンバードを作って、そして全国のチームを引っ張っていってもらいたい。そして、地方を盛り上げていきたいよね。

松岡 そうですね、地味にじゃなく、楽しく、カッコよく。今日はありがとうございました。

 

profile 横尾 俊成(よこお・としなり)
1981年神奈川県横浜市生まれ。大学卒業後、博報堂に入社。アパレル、官公庁、NPOなど幅広いジャンルを担当。
2010年10月、博報堂を退社後にNPO法人グリーンバードの代表を務め、現在、港区議会議員。

profile 松岡 真満(まつおか・まみ)
1991年神奈川県横浜市生まれ。自身の高校留学がきっかけで、海外留学のコンサルタントとして現地学校への入学などの手配を担当。
現在、ソーシャルデザインワークスでイベントの企画、運営兼いわきチームリーダーを行う。

GochamazeTimesCompany

全国各地にライターやプロボノを抱える編集社。タブロイド紙|GOCHAMAZE timesの季刊発行、および、地域の方々と共創するごちゃまぜイベントの定期開催により、地域社会の障害への理解・啓発|年齢・性別・国籍・障害有無に限らず多様な”ごちゃまぜの世界観”をデザインし続けている。

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