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GoChaMaZe INTERVIEW

10万枚に込める、10万通りの物語

Hand Stamp Art Project 特別対談
対談 / 横山万里子さん×松岡真満
10万枚に込める、10万通りの物語

障がいや難病を抱えた子どもたちの「手形」を10万枚集め、それを1つの作品にして2020年東京パラリンピックで掲げようという「ハンドスタンプアートプロジェクト」。東京から始まった壮大なプロジェクト、実はいわきからもチャレンジが始まっています。どんなプロジェクトなのか、そこにはどんな思いが込められているのか。ソーシャルデザインワークスの松岡真満が、同プロジェクト代表の横山万里子さんに話を伺いました。

松岡 今日はインタビューをお引き受け頂きありがとうございます。今年から私たちも「10万枚のうち1万枚を集める」という目標を掲げてプロジェクトに加えてもらっていますが、参加してくれた皆さんからの反応がすごくいいんです。最近の反響はいかがですか?

横山 ようやく1万3千枚が集まったところですが、最近は集まる速度がどんどん速くなっているような気がします。今年中に5万枚はいきたいですね。私自身、重度の障がいを持つ子どもの母なのですが、私と同じような立場のお母さんたちが共感してくれています。10万枚までまだまだ足りませんが、大きなムーブメントにしていけたらと思っています。

松岡 インタビューを進めて行く前に、改めてプロジェクトについて簡単に教えて頂けますか?

横山 ハンドスタンプアートプロジェクトは、18歳以下の障がいや病気を抱えた子どもたちと、それを応援する皆さまのスタンプを世界中で10万枚集めて、それを2020年の東京パラリンピックで掲示をしてもらおうという活動です。重度の障がいを持つ子どもたちのお母さんたちと「子どもたちは障がいはあるけど、なにかできることがあるよね」という雑談から始まりました。病院や家から出られなくても、天使になって空に行ってしまった子どもたちでも参加ができるものがないかなって。それで、スタンプなら誰でも参加しやすくて、1つとして同じものはないみんなの手形、足形を集めて大きな絵にできたら素敵だよね。というところからスタートしました。

松岡 横山さんたちの活動を知った時、コンセプトがとってもすばらしくて、私たちが展開する「ごちゃまぜ」にも通ずるものがあると直感しました。アート作品としてのビジュアルの強さもあるし、集める数が達成感に繫がりますよね。それで、私たちも参加させてもらうことになったんです。

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―誰でも参加できることが出発点

横山 もともとは、18歳以下の病気や障がいの子だけが参加できる企画でした。でも、実際にやってみると、障がい児の家族や兄弟からも一緒に参加したいという声があって。それに、いくら話をしても、いくら伝えても、企画に一緒に参加できないとメッセージも伝わらないと思うようになったんです。それで窓口を広げました。

松岡 楽しみながら関われるのが素晴らしいですよね。そのほうが結果的に障がいのことを楽しく知れると思います。

横山 障がい児のお母さんって、一緒に子どもを連れていると、よく話しかけられるんだけど、子どもたちの見た目がちょっと違ったりすると「あっ、ごめんなさい」って言われちゃうんです。障がいや病気のある子はチューブをつけていたり、器具が必要だったりするじゃないですか。普通だったら「お名前は?」とか「何が好き?」なんて会話が始まりそうだけど、コミュニケーションのハードルが上がってしまうんですね。その壁を感じると障がい児の親がバリアを張ってしまう。そういう悪循環に陥るのを防ぐためにも、楽しいことを通じて学ぶというプロセスは大切です。

松岡 私たちの「ごちゃまぜ」も、障がいの有無や年齢、国籍とか関係なく一緒に楽しもうってことが根っこにあります。実は、合理的配慮も最低限で、不必要な介入はしていません。その人がしたいように楽しめばいいし、困っていたら助けるし、ただそれだけ。

横山 前回いわきに来た時は雨だったけど、ソーシャルスクエアのメンバーさんも一緒にスタンプを押してくれて面白いなって思いました。それぞれがやれること、得意なことを出し合って対応してくれて、みんなでできるってこういうことだなって痛感したんです。松岡さんたちのように、社会にあるいろいろな壁を突破してる人たちとコラボレーションするのはとても楽しいし、学ぶべきものがありました。

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―毎日必死に生活するなかで

松岡 ハンドスタンプは障がいを持つ子どもたちや保護者の思いや社会課題にアクセスするチャンネルにもなりますよね。横山さん自身、障がいを持つお子さんの親御さんです。プロジェクトを始めた背景には、やはり障がい児の親御さんならではのご苦労があったかと思います。

横山 そうですね。実際、毎日の生活は本当に必死で。必要な備品、生活用品がほかの子どもたちとは違いますし、リハビリ、病院、施設、いろいろなところに通わないといけません。しかも、制度や情報量、病院や施設など、ハードもソフトも大きな地域格差があります。ハンドスタンプを通じて、親たちのそのネットワークが広がってくれればとは思っています。

松岡 確かに、私たちが関わる就労移行支援の地域格差も大きな問題です。

横山 特にお母さんは、いずれは仕事に復帰しようと思っていても、生活が大きく変わってしまうんです。毎日付き添いで保育園や施設に通う自分の時間が取れなくなってしまって。社会に復帰できなくなったり、地域の接点がなくなってしまうという、そういう問題もあります。

松岡 そうですね。障がいって、なぜかいつも当事者の負担ばかりがどんどん増してしまうけど、そうではなく、もっと地域のみんなで少しずつ負担をシェアしていったほうがいいと思います。負担もシェアするんだけれど、そのきっかけが「楽しい」とか「面白い」とかになっていけば、知る機会も増えるし、困った人に手を差し出すということが、もっと自然にできるようになりますよね。

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―普通の一日のその1コマをスタンプに

横山 そこで思うのは、私たちって、毎日本当に必死なんだけれど、やっぱり生活は楽しいんです。身の回りのお母さんたちに聞いてもそう。私の子も、重度の障がいはあったけれど、ずっとずっと一緒にいられると思っていました。急にいなくなって天使になってしまったけれども、その日々は、けっして劇的なわけでもなく、特別でもなく、普通の毎日でもあったし、日々楽しかった。そういうことも、ちゃんと伝えていかないといけないと思っています。

松岡 障がいを持った子どもたちを特別視することなく、当たり前の日常があったんだ、自分たちと同じ普通の毎日があったんだということを知れると、そこから、今までの福祉とは別の当事者意識が生まれるような気もします。ハンドスタンプって手形1つひとつに物語がありますよね。そこに触れることが大事だと思います。特別だけど特別じゃないっていうか。そういう感覚。

横山 10万枚の1枚1枚にストーリーがあります。その物語を繋げていきたいんです。『ペイフォワード』って映画がありますよね。1人の子が3人にいいことをして、今度はその3人が別の3人に伝えて9人になって、みたいな。あれが好きで。息子の物語を通じて誰かと繫がって、他の子たちの物語にも出会いながら、その輪が少しずつ広がっていくような。作品が少しずつできあがって、大きくなっていって、その結果、社会が少しずつ変わっていくといいですね。

松岡 子どもたちにも伝わっていると思います。子どもたちなりに、障がいってなんだろうか、どんな障がいがあるんだろうとか。知らないまま大人になるんじゃなくて、子どもたちなりに学んでいく。それを続けていったさきに、ごちゃまぜなんて言葉を使わなくてもいい社会が生まれるんだと思います。そのためにも、まずは1万枚、頑張ります!

 

profile 横山万里子(よこやま・まりこ)
1980 年千葉県市川市生まれ。 6歳と5歳の子どもの二児の母。
難病を持って生まれ、5歳で亡くなった息子をきっかけに介護士として働きながら、
ハンドスタンプアートプロジェクトを 2014 年に立ち上げ。
一緒に子どもたちの未来を笑顔にする仲間を世界中で探しながら、
手形で世界一大きなアートを作るプロジェクトに挑戦中。2020 年までに 10 万枚を目標としている。

profile 松岡真満(まつおか・まみ)
1991年神奈川県生まれ。2008年にスウェーデンの高校へ編入し、
国籍や言語、文化など街全体が多様な世界を体感。
帰国後、海外留学コンサルタントとして、入学手続きなどの手続きを担当。
現在、ソーシャルデザインワークスで、障がいの有無や国籍など関係なく、
皆と同じ空間で楽しむ、ごちゃまぜイベントの企画運営兼、
グリーンバードいわきチームリーダーを務める。

 

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小松理虔|ヘキレキ舎
小松理虔|ヘキレキ舎
フリーライター。いわき市小名浜在住。UDOK.というオルタナティブスペースを主宰しつつ、地域に根ざした企画、情報発信、地産商品のブランディングや営業支援などを業務とする個人事務所「ヘキレキ舎」を運営中。